2018年12月16日(日曜日)
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【論説】米ロを前に国家主義を堂々批判するフランスの世界観

※イメージ画像

 
第1次世界大戦終戦100周年の記念式典が11月11日、パリで開かれ、マクロン仏大統領は世界にまん延するナショナリズム(国家主義)を批判した。トランプ米大統領やプーチン露大統領などが見守る中で、最年少40歳のマクロン氏が「ナショナリズムは愛国心の裏切りだ」と喝破した。
 
フランスはユニークな国である。フランク王国の時代からドイツ、イタリアと国土を分断した近隣関係で、海を隔てたイギリスとは14世紀に百年戦争を戦って以来、大航海時代を経て帝国主義時代の覇権争いでもライバル関係であり続けた。
 
この間、フランス革命を経てナポレオン皇帝誕生の時代には欧州を席巻し、イギリスとロシアに敗れるまで世界史の中心で体制転換の脅威を印象付けた。第1次と第2次世界大戦では主要な戦場となり、特に第2次大戦ではナチスドイツに国土を蹂躙されながらもレジスタンス政府がイギリスと連携し、ノルマンディー上陸作戦でドイツ軍を破り、パリが解放された。
 
世界に先駆けて市民革命を成功させ、その後はナポレオンという“英雄”を誕生させて、瞬く間に帝国領土を拡大させた。正しいとばかりは言えない歴史の歩みだが、常に歴史の表舞台にいてイギリスやドイツといった強国の狭間で時に同盟を結び、時に仮想敵国として欧州の中心であり続けた。
 
戦後は5か国(米ソ英仏中)のみに許された核保有国の1つとして国際連合の安保理常任理事国に名を連ね、西側諸国の中でもアングロサクソン系の米英とは一線を画した独自の外交を行ってきた。1993年、マーストリヒト条約発効によって欧州連合(EU)が誕生すると、ドイツと共に欧州をまとめ、米ロに並ぶ政治・経済圏として影響力を保ち続けている。イギリスのEU脱退交渉が大詰めを迎える中で、マクロン氏はアメリカを中心とした軍事同盟であるNATO(北大西洋条約機構)とは別に欧州独自で「欧州軍」創設を提案している。
 
記念式典では、「『自国第一で他国には無関心』という考え方は、道徳的価値観を踏みにじる」と、世界に警鐘を鳴らした。そんな若き指導者に対して、トランプ氏は米仏首脳会談後、立て続けに4回ツイートをした。
 
「米中露から欧州を守るため(欧州軍を)創設するというが、第一次、第二次大戦ではドイツ相手だった。フランスにとりどれだけうまくいったのか?」「(NATO分担金を)払うか払わないかだ」「フランスほど国家主義的な国はない。フランスを再び偉大に!」「(米国産ワインへの関税が高く)公平ではない」と批判の連続だった。
 
年齢も経歴も世界観も異なる2人の指導者は、水と油のように交じり合うことがない。アメリカの国土の15分の1、人口は6分の1程度しかない、歴史と文化ある国の佇まいには、ブレない軸のようなものが見受けられる。アメリカに物申せぬ国の一員として、ある種のリスペクトを抱かざるを得ない。