2020年02月28日(金曜日)
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―日本における南モンゴル民族自決権確立運動の展望- 三浦小太郎(評論家)

中華人民共和国政府による、南モンゴル(内モンゴル)における民族絶滅政策とみなすべき残酷な弾圧と虐殺について、残念なことに日本ではいまだ十分な認識が広まっているとは言えない。これはチベットやウイグル問題に比しても認めざるを得ない現実である。しかし、南モンゴルと日本は歴史的にも実は密接な関係を持ち、近年では南モンゴルの人権状況についても多くの報告がなされている。今回は歴史的関係には簡単に触れたうえで、今後の南モンゴル民族自決権運動の展望について報告したい。

 

はじめに 国民作家司馬遼太郎によるモンゴル人権問題への関心

     それを引き継ぐ形で発展させた楊海英教授の業績

 

作家司馬遼太郎は、1960年代から1996年に亡くなるまで、様々な歴史小説や歴史エッセイ、文明史論などを世に問い、多くのベストセラーを生み出してきた。近年ではその歴史観に様々な批判的研究もおこなわれているが、広く日本国民に愛されてきた「国民作家」であることには誰しも異論はあるまい。その司馬には「草原の記」(1992年)という最晩年に書かれた作品があり、そこでは南モンゴルが文化大革命時代にひどい弾圧を受けたことが、中国の歴史文明観とモンゴルの歴史文明観の違い、中国支配下における遊牧文化の破壊などと共に明確に記されている。そして、ツエベクマというモンゴル人女性の生涯が語られ、満州国時代に受けた日本人教師からのすぐれた教育、モンゴル独立への意志、そして文革時代に夫にも自分にもくわえられた弾圧と悲劇が見事に記述され、南モンゴルの現代史が多くの日本人読者に触れることになった。

この司馬遼太郎の仕事をここ日本において引き継ぐ形で発展させたのが、静岡大学教授、楊海英氏の研究である。

楊氏は著作「墓標なき草原」(2009年)にて、初めて文化大革命時代の南モンゴルにおける中国政府の弾圧が、まさに「民族絶滅政策」であったことを幾多の証言、そして当時の中国区側の資料によって立証した。その後、楊氏はこの文化大革命時代の一次資料を次々に出版している。この資料に基づいて現在進められているのが、ユネスコにおける「世界の記憶」に、この民族絶命政策の悲劇を記録する試みである。

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