2017年08月17日(木曜日)
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書評 ユダヤとアメリカ 立山良司著 中公新書 三浦小太郎(評論家)

書評 ユダヤとアメリカ 立山良司著 中公新書 三浦小太郎(評論家)

 

 ユダヤとアメリカ

 ヘイトスピーチ法の是非が議論になった時、私が真っ先に思い出したのは、本屋に山と並んでいる「ユダヤ陰謀論」の存在だった。私はあの手の本にはほとんど興味がないのだが、多少内容は知っている。それはオウム真理教について調べていたとき、彼らの機関紙にはその手の本からとったと思しき陰謀論が大量に引用されていたからである。その後、フランス・ファシズム文学についての福田和也の論考から、反ユダヤ主義がヨーロッパにおいて、反近代主義と複雑に結びついた無視できぬ思想的潮流としてあり、優れた文学者、思想家もその誘惑に駆られていった人が少なからずいることを学んだ。だが、そこにどんな思想的背景があろうとも、反ユダヤ主義は明確に差別思想であり、世界をユダヤの陰謀が支配しているといった妄想は百害あって一利なしである。

しかし、私は言論の自由は、たとえ間違った言論であれ認めるべきだという立場を原則にしているので、粗悪なユダヤ陰謀論であれ出版を禁止せよとは言わない。むしろ、ユダヤ人について正しく書かれた良書を推薦することで、正しい知識と情報を啓蒙していくことに努めたいと思う。

本書「ユダヤとアメリカ」は、これもとかく陰謀論で語られやすいアメリカにおけるユダヤ人組織、さらにはイスラエル・ロビーについての客観的かつ的確な解説書である。著者は、アメリカがこれまで、イスラエルの核開発を看過し、また不当な入植地拡大に関して何ら批判しない姿勢を貫いてきたこと、その背後にはユダヤ人組織並びにキリスト教原理主義組織の圧力があることを否定しない。特に本書第二章では、戦後のアメリカ外交を貫く、ユダヤ人組織の強大な影響力を指摘し、それは単なる資金力や組織力だけではなく、イスラエルとアメリカが建国理念を含め様々な価値観を共有している精神的な結びつきによるものであることを指摘する。だが、同時に本書は、ユダヤ人社会が世代の推移とともに、全く新しい意識を持ち始めていることを明らかにしている。

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