shohyo「書評」

追悼 松本零士さん  三浦小太郎(評論家)

松本零士さんが天国に旅立たれました。たくさんの名作を残された方ですが、私の好きなのは「男おいどん」と「大純情くん」そして、戦記物では「スタンレーの魔女」「戦争交響楽」です。その中でも、最初に読んだ松本作品「男おいどん」が懐かしく思い出されます。

 

「男おいどん」は、四畳半に一人住む若き九州男児、大山昇太こと「おいどん」の物語ですが、今の時代読み返して強く感じるのは、主人公が、正直自分でも認めているようにさして才能もなければ実力もなく、また自分の実力を磨き学ぶ暇もないほど日々のバイト生活(しかも当時でもあまりお金になっていそうにない)に追われているのに、強烈なまでの「上昇志向」を持っていること。それが何であるかは別として「最後には笑って死ぬのだ」「大物になるのだ」という意志は根拠もないのに強く、逆にどんなに挫折しても変わらない。

 

これは松本零士の作風である以上に、やはりこの作品が書かれた70年代初めごろまでは、時代そのものがそんな空気を持っていたのだと思います。例えば後の前川つかさの「大東京ビンボー生活マニュアル」と比べると、80年代という時代が日本から何を失わせ、また、何を与えたのかがわかるような気がする。

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