2018年09月21日(金曜日)
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【論説】サマータイムは批判を招く可能性が…

建設工事が進む新国立競技場

 
事情を知らずに聞くと面白いアイデアだと思っても、よくよく考えるとろくでもないと思う案がある。
 
森喜朗・東京五輪組織委員会長が安倍首相に提案したという夏時間、サマータイムだ。日照時間の長い夏に時計の針を1時間か2時間進めるという。今夏の酷暑を受けて、2020年東京五輪での競技運営に不安の声が出ていることから、2年程度の時限立法でどうかというのである。
 
森氏の提案以前からサマータイム導入については何度か議論されてきた。欧米など先進諸国の大半が取り入れていることや、照明の節約など環境に優しいこと、余暇が増えることで経済活性化やワークライフバランスが充実する……などといったメリットが語られてきた。これらの説明だけ聞けば、確かに良い。なぜ日本は取り入れないんだ、という気持ちになる。
 
しかし、戦後まもなく、GHQ主導で1948年から4年間実施して失敗した歴史がある。余暇が増えるよりも労働時間が延長され、国民の間で反対の声が増えて終わった。当時は戦後復興期で多くの家庭は働き手を失い、余暇の充実よりも働いて食いつなぐことの方が喫緊の課題だったので、時代に合わなかったのかもしれない。
 
だが、上記のメリットの1つひとつを検証すると、本当にメリットがあるのかという疑問が湧いてくる。EUは1996年から導入しているものの、国民生活に混乱を来たすとの理由で、今年2月にフィンランドが欧州委員会に廃止を提案している。
 
省エネや余暇、経済効果のメリットも、かえって残業時間が増えて、省エネも経済効果もないのではないかという意見がある。1日24時間は変わらないので、終業時間は早まるが、出勤・登校時間も早まるので、日が高いうちに終業すれば誰も飲み歩かず、直帰するか残業し、日の入りから間もなく就寝時間になっても寝付けず、睡眠障害の発症者が増えるのではないかという懸念もある。
 
ある日突然、日の出が1時間早まるわけではないので、人工的に時間を早くすれば、体に支障を来たす人が増えても不思議ではない。やっと慣れたと思った頃にサマータイムが終了し、また睡眠障害に悩まされるなんて、二重のトラップにかかるような笑えない被害者が表れる可能性もある。旅行もしていいないのに時差ボケにかかるようなものである。
 
であれば、各企業や個々人が夏時間を設け、早寝早起きすればいいだけの話のような気もするが、そこはやはり取引時間や時間割などもあるから一斉に変わらないと難しいのだろう。東京五輪に関して言えば、スポンサーの関係で視聴率を上げたいという思惑もあるのだろう。
 
東京都は、昨年度から夏の時差BIZを行っている。今年は7月9日から8月10日までの期間、企業に対して時差出勤などを、鉄道事業者には時差通勤者への特典を設ける試みなどを呼びかけた。森氏の発案も、競技時間の繰り上げと、企業などへの時差勤務を呼びかけるか、選手の体調が心配なのであれば思い切って開催時期を秋にずらせばいいのではないだろうか。
 
クールビズは成功したが、プレミアムフライデーは失敗した。やってみなくては分からないこともあるので、試してもいいかもしれないが、かえって混乱を招いて不評のうちに終わる未来予想図が浮かぶのだが、さて。