2018年08月18日(土曜日)
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【論説】全てを引き受けた上川法相は政治家の鑑である

上川氏の政治信条が綴られた本人HP

 
法務省は7月26日、オウム真理教の元幹部6人の死刑を執行した。7月6日に執行した松本智津夫(麻原彰晃)元代表ら7人とあわせ、元幹部の全13死刑囚の刑執行を終えた。
 
短期間で13人の死刑を執行したことについて、報道ステーションでは「1か月の間に13人もの死刑執行を行った」と、ニュースキャスターは不必要に何度も強調した。オウムを追及してきたジャーナリストの江川紹子氏は「麻原と弟子との責任は天と地ほども違う」とし、第三者の面会がほとんど許されなかった弟子らを専門家がもう少し聴取し研究して再発防止に役立てることができなかったかと指摘した。
 
様々な批判はあるが、被害者の中には現在も病床で苦しむ人もいる。平穏な日常を奪われた家族や遺族にすれば、自分たちが生きている間に区切りをつけてほしいという思いもあったはずだ。弟子らの心理研究をし尽くせなかった側面はあるかもしれないが、贖罪に目覚めた弟子の多くは、公判で余すことなく犯行に至った一部始終を語り尽くした。
 
オウム事件後に裁判の迅速化が叫ばれ、様々な司法制度改革が行われた経緯を振り返ると、未曽有の被害や衝撃を与えた一連のオウム事件が平成という元号の間にひとつのピリオドを迎えたことは、司法の役割の意味でも前進と言えるのではないだろうか。
 
刑執行の最終判断を下した上川陽子法相は毅然とした態度で「慎重な検討を重ねた」と繰り返した。当然に予想された批判や異論を全て飲み込み、リスクを背負い、己の役割を全うした覚悟と胆力に対し、静かに敬意を表したい。
 
民主党政権で法相を務めた人物の中には、「(政治家になって)この20年、法務には1回も触れてない」「法務大臣なんて2つ覚えときゃ良い。『個別の事案についてはお答えを差し控えます』『法と証拠に基づいて適切にやっております』。何回使ったことか」などと無責任極まりない発言をした柳田稔というゲスな輩もいた。自身が法相になる前に死刑制度に否定的な発言を繰り返し、在任中に一度も執行を許さなかった職責放棄の輩もいた。法相ではないが、7月21日に死去した松本龍元復興相の被災地における言動が久々にテレビで放映され、改めて民主党政権時代の人材が劣悪であったかを思い知らされる。
 
上川法相に対して、生涯にわたり特別警護がつく見込みであるという。これだけの覚悟を持ちながら政治に向き合っている国会議員が、永田町に果たして何人いるのだろうか。権勢欲や名誉欲ではなく、誰からも評価されなくとも淡々と重責を全うする。余計な言い訳や逃げ口上もしない。久しく見ていないプロフェッショナルの政治家を見た気がする。
 
舌禍や圧力など女性議員の不祥事が続く中で、上川法相のような人物こそが初の女性宰相に相応しいと思うが、彼女にそんな野心があれば、そもそもこのタイミングで法相は引き受けなかっただろう。マスコミや国民がこうした決断の真価に気づけば、この国の政治も一つ上のステージに進むと思うが、残念ながらそうした評価の声はほとんど聞かない。