2018年08月16日(木曜日)
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【論説】抜群の話題作だけど…芥川賞候補『美しい顔』の問題点

北条氏のコメント

 
芥川賞候補作に選ばれた北条裕子氏(32)の作品『美しい顔』が、複数の文献からの無断引用があるとして問題になっている。
 
同作品は、東日本大震災で母を亡くした少女が新たな出会いを通じて成長していくストーリーで、4月10日に講談社主催の第61回群像新人文学賞を受賞した。
 
同社によると、文学賞受賞から10日後の4月20日に本人から参考文献の提示があった。北条氏は「単行本化される際に記載すればよいという甘い考えだった」と認識し、今はひどく落ち込んでいるという。参考文献は、新潮社出版のノンフィクション作品など5点から表現の一部類似性が認められているが、小説そのものはオリジナルのストーリーで構成されている。
 
作品としての完成度を訴える講談社に対し、ネット上では「引用ではなく、盗作・剽窃だ」という意見も多い。無断引用されていた出版元の一つ、新潮社も「単に参考文献として記載して解決する問題ではない」と表明したことで騒動が大きくなった。講談社は、多くの人に作品そのものを紹介するため、ネット上で7月4日から13日まで無料公開した。
 
講談社がここまで北条氏を擁護するのは、自身の主催する文学賞で文献引用の記載を怠った責任の一端があるからだ。通常のフィクション小説であれば、ここまで大きな問題にはならなかっただろう。舞台が東日本大震災であり、著者が自分の足ではなく、他人の文章で東日本大震災という未曽有の災害を語っていることに違和感を覚える人が多いのだと思う。
 
過去には故・山崎豊子氏や田口ランディ氏など有名作家に盗作の疑いがかけられ、一部認めたり大幅に改訂して出版したりするなどして事態の収拾に努めたものの、オリジナリティーが求められる作家やアーティストにとってはブランドの死活問題にかかわるだけに、騒動の行方が気になるところだ。
 
芥川賞の選考委員会は7月18日。ある意味、今回の候補作の中で最大の話題作になったことだけは間違いないが、火中の栗を拾えば、騒動は何倍にも膨らむだろう。