2018年08月16日(木曜日)
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【論説】結果オーライも、判断誤った西野監督

サッカーのイメージ画像

 
サッカー・ワールドカップ(W杯)ロシア大会のHグループ第3戦、日本はポーランドに0ー1でリードを許しながら、残り15分、パス回しで時間を潰して試合を終えて、グループ2位で決勝トーナメント進出を果たした。この選択に関して、国内外で賛否両論が起こっている。
 
終盤に何があったのか。同じHグループの別の試合で、コロンビアがセネガルに先制し、日本がこのまま終われば、セネガルと勝ち点や得失点差、総得点、直接対決引き分けと順位を決定づける要素が奇跡的に並ぶ。最後の条件であるフェアプレーポイントの差でイエローカードが2枚少ない日本が決勝トーナメントに進めるという状況になった。因みにこのポイントも同点であった場合、最後は抽選となる。
 
監督の西野朗(敬称略、以下同)は、セネガルがこのまま敗退することを期待して今大会から導入されたフェアプレーポイントの差にかけた。武藤嘉紀と交代した長谷部誠は、西野の意思をイレブンに伝え、負けている日本が時間稼ぎの球転がしをするという前代未聞の展開が始まった。ピッチの選手たちは何度も確認し、スタジアム中から大ブーイングを浴びる中、攻めに転じたい気持ちを抑えて終了のホイッスルを待った。
 
ポーランドにしても、2連敗を喫したまま帰国の途につくわけにはいかない。このまま試合に勝てば最低限の面目は保てる。両チームの利害は一致し、観客は無意味なパス回しを15分間見せられて終わった。高額なチケット代や旅行費を払って応援にきた両国のサポーターは、試合を捨てた両代表、とりわけ日本に対して最後までブーイングを止めなかった。
 
結果的に日本は決勝トーナメントに進んだが、それまでの戦いぶりを称賛していた海外のメディアやサポーターに大きな失望を与えた。将来サッカー選手を夢見る子供たちもがっかりしたに違いない。
 
仮に最後の数分間でセネガルが得点していれば、西野は試合だけでなく、1次リーグも敗退となり、後世に語り継がれるほどの判断ミスとして記憶されたに違いない。結果オーライだったからこそ、他力本願にかけた西野の判断に賛成する意見があるに過ぎず、今回の選択を成功例としてほしくない。
 
最高指揮官として西野もぎりぎりまで迷ったに違いない。先発6人を交代し、序盤から明らかに連係ミスが続いており、後半に先制されると選手らの焦りは浮き足だったプレーに表れた。トラップの失敗やパスミスが続き、ボールが足元に収まらない。間近で見ていた西野はその変化を最も強く感じていたのだろう。得点のニオイがあまり感じられない。逆にカウンターで失点を重ねる日本の悪いパターンが脳裏によみがえる。
 
パフォーマンスが良ければ西野の判断も違っていたものになっていたのかもしれない。他会場の途中経過を聞いて、九死に一生を得るチャンスを掴んだと思ったのだろう。決勝トーナメントに進めば、FIFAから日本に約14億円の報奨金だって入る。何より、開幕前にほぼ絶望視されていた決勝トーナメント進出が、現段階で掴みかけている。選手たちは非難されるかもしれないが、俺の指示と言えば自分だけが糾弾されれば済む話だ。
 
そういった思考回路の中で、消極的な他力本願の選択にかけたのかもしれない。最もフェアプレーから程遠い戦い方で、フェアプレーポイントによって勝ち上がるという皮肉な結果にはなった。テレビ越しに応援するサポーターと、最高指揮官の置かれた立場の違いは、我々の想像以上のものなのかもしれない。
 
少年に夢を与えるサッカーの祭典で、西野が選んだ大人の判断と現実の選択。もしセネガルが得点していたら。もしポーランドが終盤に積極策に出たら……。他力本願は弱いチームの最後の手段である。最悪の結果を招いたパラレルワールドがあるとして、帰国する日本代表を世論はどのように迎えるだろうか。想像するのが少し怖い。