cc「中朝国境の旅」

「中朝国境の旅」 第三回 宮塚コリア研究所研究員 中学校教員 野牧雅子

 母親の野外おしっこの写真を撮った、平成二〇年三月の旅行だが、瀋陽の桃仙空港から通化を通り臨江に着くまで、夫宮塚は大変に不機嫌であった。雪が積もっていて天気が悪く、対岸の北朝鮮がよく見えない、とがっかりしていた。案内人は二十代後半の若い女性、運転手は同じくらいの年齢の男性であった。二人とも朝鮮族。この青年が私達の北朝鮮ウォッチングに大変興味を持ってくれた。

 長時間車に揺られ、二六日の夜に臨江に着いた。夫は「中国の列車にだけは乗りたくない」と言う。それで、中国での移動は全て車であり、案内人と運転手を雇うのであった。中国は広い。目的地で過ごす時間より、移動の方がずっと長かった。

 臨江から長白(北朝鮮側は恵山)まで、数時間かかった。その間、ぴったりと公安の車が着いてきた。後ろから来るだけではない。前からも公安の車が来て走りながらすれ違った。普通のパトカーであることもあれば、覆面パトカーもあった。私達が車を止め、対岸を眺めて北朝鮮の建物や電車を確認している横を、公安の車が行き交った。「やんなっちゃうな」夫はいらいらしていた。なぜ、ここまでしつこく追い回されるのか。案内人の女性の説明だと、過去、夫の案内をしていた朴先生という男性が、この時、私達が鴨緑江を訪れるの知り、なんと、公安に「あやしい夫婦が来るぞ」と密告したと言う。

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