2020年01月21日(火曜日)
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【自由民主主義か権威主義か、価値を争う台湾総統選挙】 権田猛資(Youtube「ゴンタケChannel」)

 台湾の行く末を左右する総統選挙が1月11日に投開票される。自由や民主主義、法の支配といった普遍的価値を死守するか、或いは権威主義国家・中国の圧力に屈して融和路線に舵を切るか、台湾の命運を決する戦いである。

 今回の総統選挙は、二期目を目指す現職で民主進歩党(以下、民進党)の蔡英文に対し、高雄市長で中国国民党(以下、国民党)の韓国瑜と親民党主席の宋楚瑜が挑む三つ巴の構図だ。

 2018年11月24日に行われた台湾全土の22県市の首長や地方議員などを選出する統一地方選挙で民進党は国民党に大敗を喫し、当時、蔡英文の総統再選は危ぶまれていた。一方、国民党を大勝へ導いた人物こそが韓国瑜である。韓は統一地方選挙において歯に衣着せぬ物言いや清廉で質素な庶民派候補のイメージ作りに成功し、民進党の牙城であった高雄市で相手候補に15万票以上の差をつけ圧勝した。韓の動静はメディアで注目を集め「韓流ブーム」が台湾全土に波及して国民党は勝利を収めた。

しかし、統一地方選挙の大敗によって再起不能と見られた蔡英文だったが、2019年新年早々から「敵」の助け舟によって復活し始めた。大きな契機となったのが、1月2日に発表された中国国家主席の習近平による台湾に関する重要談話である。1979年元旦に中国の全国人民代表大会常務委員会が発表した「台湾同胞に告げる書」の40周年記念式典において発表された談話は、「一国二制度」の台湾モデルに言及した。民主主義国家・台湾が権威主義国家・中国の統制下に入ることは到底受け入れられるものではない。蔡は迅速に反応し「台湾は断固として『一国二制度』を受け入れない」と断言して支持を集めた。皮肉にも中国が「核心的利益」とする台湾の統一を志向すればするほど、台湾人の心は中国から離れていくわけである。また「一国二制度」の下にある香港で逃亡犯条例改正案を契機に6月以降、激化している香港民主化デモの経過を台湾人は冷静に注視している。「今日の香港」が「明日の台湾」にならないよう教訓としているのだ。

 こうした中国要因によって、対中融和路線の国民党は厳しい戦いを強いられ、加えて、国民党内部の権力闘争に伴う分裂や韓が就任から一年も経たずに市政を投げ出したこと、また度重なる韓の失言やスキャンダルによって、蔡が韓を大きく引き離し、再選に向けて優位な選挙戦を進めている。

 また注目すべきは若年層の蔡英文に対する支持率の高さである。若者が蔡を支持する理由は、2019年5月17日にアジア初となる同性婚の合法化を実現したり、2025年までの脱原発を宣言したりと、若者の支持を集めやすい政策課題に積極的に取り組んでいるからだ。そして、民主主義国家・台湾で生まれ育ち、権威主義国家・中国との違いを明確に認識している若者は、中国にはっきりと「NO」を言える強いリーダーを求めているからであろう。したがって、中国が台湾に対する圧力を繰り返し、香港情勢が混乱すればするほど、対中融和路線の国民党が若者から支持を集めることは難しくなっていくのである。

 今回の総統選挙は自由民主主義と権威主義の価値を巡る戦いであるアジアの自由民主主義陣営の旗手である日本は台湾人の選択をしっかりと見届け、民主主義国家・台湾との連帯を強化していく使命がある。中国の台湾に対する強硬姿勢は今後も続くだろう。日本は台湾との安全保障協力をはじめ、更なる関係強化を進め、アジアにおける自由民主を死守しなければならない。

 

民進党の選挙集会。「NO CHINA」の文字も