2018年10月19日(金曜日)
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日本の命運をかけた安倍三選と国際情勢 つくる会副会長 石原隆夫

 私は自身を悲観論者とは思っていない。悲嘆に暮れたことはあったが、何とか長い人生を前向きに生きてきたからだ。だが、ここ四、五年に限って言えば、子や孫の将来を考えると、日本の行く末に悲観せざるを得なかった。
 
 以前から指摘されていた少子高齢化による国力の減退や経済成長率の低迷、観念的でリベラルな政治思想の蔓延などは、成熟した国にはよく見られる現象で避けては通れないものだが、そのことが国の安全保障に関わり、ひいては国家の存亡に直接影響するとなればどうだろうか。日本が直面する国際情勢は、中国・北朝鮮・ロシア・韓国の東アジア反日勢力の攻勢のみならず、今やトランプのアメリカも厄介な存在となっている。相手は徹底的に日本の国内状況を分析し、勝ちに行く戦略を練っているに違いない。
 
 この様な状況で国の舵取りを一つ間違えれば、子や孫の世代には悲惨な運命が待っているに違いない。そうならないために、非力な国民が出来ることと言えば、外交に長け、腹の据わった賢明な政治家を応援し盛り立てることしかないのだが、先日の安倍三選は日本の命運を賭けたベストな選択であったと思う。
 
 日本にとって当面の気がかりな問題は、トランプが仕掛ける「米中貿易戦争」だが、国内ではリーマンショックの再来を危惧する声もある。しかし、アメリカに代わって現在進行形で世界覇権を目指し、新植民地主義と批判させる一帯一路政策や、国際法を無視した南シナ海の領海化など、なりふり構わず膨張する中国が、日本や自由主義陣営に与えるダメージの方が遙かに大きく深刻である。これに対しオバマは関与政策で誤魔化したが、トランプは中国の覇権政策を潰してアメリカの覇権を取り戻すために米中貿易戦争をその突破口にしたのだ。このトランプの英断は、中国の野望に悩まされる日本にとって安全保障の点から歓迎すべきことなのである。
 
 産経新聞によると、中国人移民や留学生をも工作員に仕立てた中国の官民挙げての「統一戦線工作」は、アメリカの各大学に働きかけて中国に有利なように教科の内容を変えさせたり、チベットやウイグル人への人権弾圧に関する講義や研究には、抗議や威嚇、報復や懐柔とあらゆる手段でアメリカ人を黙らせ、遂には大学当事者や学者が中国の反発を恐れて「自己検閲」するまでになったという。この事態にはさすがに中国に甘かったアメリカもやっと彼らの邪悪さに気がつき、中国の工作機関の最前線と認定された孔子学園の閉鎖が相次いでいる。
 
 インド洋に浮かぶモルディブの大統領選挙では、一帯一路政策を受け入れて中国べったりの強権政治を目指した現職大統領がインド派の野党候補に敗れた。スリランカとマレーシアの大統領選挙でも、一帯一路政策に反対する反中国派に政権を奪取され、中国は世界制覇の足場をあちこちで失なう結果になっている。米中貿易戦争とのダブルパンチで習近平は窮地に立たされている。最近の中国の日本急接近の裏には以上のような事情があるのだが、日米同盟に割って入ろうとする中国の外交にどのように対処するかが安倍三選に期待されているのだ。
 
 九月十八日の産経新聞一面には「海自 南シナ海で潜水艦訓練」の大見出しが躍っていた。中国が軍事拠点化したスプラトリー諸島ととパラセル諸島に囲まれた海域で護衛艦部隊と共に対潜水艦を想定した訓練を行ったと防衛省が公表したのだ。潜水艦や対潜訓練は本来隠密行動であり公表することはほとんどあり得ないのだが、あえて中国の対日急接近の最中に行なったことで、中国に強烈なメッセージを送ったことになった。信義を重んじる日本人には本来苦手なことなのだが、外交とは、机の上では握手を交わしながら下では足で蹴り合いしているものだという。今回の防衛省のリークは、三選前の安倍首相の指示で行われ、習近平に対して日本外交のしたたかさと中国の軍事力の脆弱さについて知らしめたに違いない。腹の据わった安倍首相以外には出来ない芸当だったと思われる。
 
 海自の潜水艦の潜水深度は公称600mだが中国のそれは300~400mといわれている。
 
 中国の潜水艦に比べて潜水深度が圧倒的に深い上に静粛性(ステルス性)は世界一という海自の潜水艦が、目の前の海底に潜んでいてもそれを感知できなかった中国軍は、アメリカと太平洋を二分しようとする戦略が、破綻を来したことを悟ったのではないだろうか。
 
 トランプが仕掛ける日米貿易問題も、安倍トランプの良好な関係を武器にして安倍首相は何とか国益を大きく損なわない程度には収めたようである。日中と日米の外交関係を冷徹に勘案し、安全保障を最優先した上で日本のプレゼンスを高めることが、三選を果たした安倍首相が、心ある国民から期待されていることではないだろうか。