2018年10月19日(金曜日)
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【なるほど納得政経塾㉘ 】 「全道ブラックアウトは、マイナス・バブルの産物」 神奈川大学経済学部教授 経済学博士 小山和伸

 本年(平成30, 2018年) 9月6日、午前3時7分に発生した北海道胆振(いぶり)東部地震のため、同日午前3時25分道内全域約295万戸が停電する「ブラックアウト」が発生した。主な原因は、全道内の電力需要量の約半分にあたる165万キロワットの電力供給が、苫東厚真(とまとうあつま)火力発電所に集中していたためである。
  
 今回の震源地は同発電所に近く、地震の揺れによって緊急停止したが、これによって電力の需給バランスが大きく崩れる事態となり、道内の他の火力発電所も過剰な負荷がかかったために、連鎖的に自動停止し、全道停電に至ったわけである。
 
 電気はためておくことが出来ず、電気の供給量と需要量は常に一致させなければならない。もし、少ない供給量のところに大きな需要が起きれば、発電所に大きな負担が生じて、設備が損壊してしまうという。そうした事態を避けるために、発電所には過剰な負担がかかった場合に、発電を自動的に停止する機能が備わっている。
 
 このような事態を避けるためには、発電能力に余裕を持っておくことと、震源地がどこに来るかは分からないわけだから、発電所を出来るだけ分散させておくことが必要になる。今回、震源地により近い苫小牧火力発電所の25万キロワットと合わせると、190万キロワットの電力が緊急停止したことになる。地震発生時の全道の電力需要は、約310万キロワットだから、実に総需要量の61%もの電力供給が失われたことになる。もちろん、地震発生時刻がずれていれば、供給不足はより深刻な事態になっただろう。
 
 道内唯一の原子力発電所である泊原発は、207万キロワットの発電能力を持つが、平成24(2012)年5月以来停止している。停止の原因として、いくつかの改善可能な事故や、原発反対派による放火などの事件があるが、いずれにせよ平成23(2011)年3月の東日本大震災を契機とする、福島原発事故以来のマイナス・バブル効果があることは、まず確実であると言えよう。
 
 マイナス・バブルについては、本連載講座の11回目「マイナス・バブルという現象」を参照されたいが、要するにある失敗や惨事に遭遇してパニックになり、意味不明の恐怖や不安から、我先に逃げ出す熱狂を意味している。つまり、意味不明の期待や希望から株式などの投機に、我先に殺到する熱狂と全く同じ論理で、逆のことが起きる現象である。
 
 今回の全道「ブラックアウト」は、マイナス・バブルの弊害を如実に示した事例と言えよう。今こそ原発忌避のマイナス・バブルを払拭しなければならない。そのためには、マイナス・バブルの契機となった福島原発の事故原因について、冷静かつ正確に分析・理解する必要がある。
 
 平成23(2011)年3月11日に発生した東日本大震災によって、福島第一原発で稼働中の原子炉は全て、緊急停止している。地震によって外部電源を喪失したものの、非常用ディーゼル発電機が自動起動して、炉心の冷却が行われていた。しかし、地震発生から50分後の津波によって非常用電源の全てを失い、炉心の冷却が不可能になった。このため、圧力容器内の冷却水は蒸発を続け、ついに燃料が水面から露出して炉心の損傷が始まった。
 
 東電発表のこの報告からして、福島第一原発の事故原因が津波による浸水であることは明らかである。この事故の直後菅直人内閣は、数百年に一度と言われる大津波が明日にでも来ると怯え、正常に稼働している浜岡原発の停止要請を出した。かくしてその後、日本中に原発忌避のマイナス・バブルが発生した。
 
 次回、国際原子力事象評価尺度(International Nuclear and Radiological Event Scale, INES)では、同じくレベル7にランク付けされているチェルノブイリと福島の原発事故を、冷静に比較してみることにしよう。