2018年11月18日(日曜日)
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中国迎合勢力は安倍首相の台湾への友情揉み消しに躍起   台湾研究フォーラム会長 永山英樹

中国迎合勢力は安倍首相の台湾への友情揉み消しに躍起
 
台湾研究フォーラム会長 永山英樹

 
(1)台湾に感動を与えた安倍首相の慰問メッセージだが
 
日本時間の二月七日未明、台湾東部で十数人の犠牲者をもたらす地震が発生したが、その直後に台湾の人々に大きな感動を与えたのが、安倍晋三首相が翌八日、蔡英文総統に宛てて発した次の慰問のメッセージだ
 
「東日本大震災の際に,古くからの友人である台湾の皆様から本当に心温まる支援を頂いたことを,今でも日本国民は良く覚えています。台湾の困難に際し,日本としては必要な支援を何でも行いたいと考えています」
 
こうした安倍首相の友情は、最大手紙自由時報が一面トップで報じるなど、台湾では大歓迎を受けたのだった。蔡英文総統もツイッターで、次の日本語メッセージを返した。
 
「安倍首相からのお見舞いは、まさかの時の友は真の友、まさにその通りです。このような困難な時の人道救助は正に台日双方の友情と価値観を体現するものだと思います。本日、日本から7名の専門家が人命探査装置を持って訪台して頂きました。これにより、更に多くの被災者の救出に繋がることを望みます」
 
ところが、このように展開された感動的なやりとりのはざまで、何とも納得のいかないトラブルが発生したのだ。それは台湾人が抱く安倍氏ならびに日本政府への信頼を大きく傷付けかねないほどの不祥事と言えた。
 
(2)メッセージから「蔡英文総統閣下」が消された
 
自由時報の九日の電子版が速報したのだが、安倍氏のメッセージは発出後、首相官邸のHPに掲載されたのだが、それからほどなくそれに書き換えが行われたのだ。
 
たとえばメッセージの上に付されたタイトルがそれだ。当初は「台湾東部で発生した地震を受けた安倍内閣総理大臣によるお見舞いメッセージ」とあったのだが、そこから「蔡英文総統宛て」が消し去れた。
 
そしてメッセージ本文の冒頭にあった「蔡英文総統閣下」との受取人名も消された。
 
この一件を伝えた自由時報電子版の見出しは、「中国の圧力か?『蔡総統閣下』が消えた」。
 
このように、台湾人ならすぐに「中国の圧力」を想像するのだ。なぜなら中国が「総統」の二文字の使用を極度に嫌うのを知っているからである。
 
(3)想起される台湾に対する外務省の内政干渉
 
台湾を自国の領土の一部とする「一つの中国」宣伝で、台湾併呑の正当化を目論むのが中国だが、あの国にとり、台湾の国家元首の呼称たる「総統」が使用されることは、台湾は国家であって中国の一部ではないと認められたようなもので、深刻な宣伝妨害と映り、どうしてもそれが許容できないのである。
 
だからこそ御用メディアの言論統制の指南書である国営新華社の「ニュース情報報道での使用禁止・注意用語」(新華社新聞新息報導中的禁止詞和慎重用詞)は、「台湾地区の政権」は「中華民国」「台湾政府」と呼ばず、「台湾当局」「台湾方面」としなければならないと規定し、同じく「中華民国総統」の呼称も厳禁とし、「台湾当局領導人(指導者)」「台湾地区領導人」と呼び変えるべきものとし、そして「総統府」は「台湾当局領導人幕僚機構」、「総統選挙」も「台湾地区領導人選挙」と呼ぶよう細かく指導している。
 
そしてどうしても「総統」と表記しなければならない場合は、通常はそれを括弧で括らせているようである。実に徹底的な言論統制と言える。そしてこの中国の滑稽なまでの統制に、何と日本の外務省が従属したことがあった。
 
二〇〇三年十二月二十九日のことである。当時中国政府は、「一つの中国、一つの台湾」、つまり台湾は中国に帰属しないとの現状を国際社会に知らせようとする台湾の陳水扁総統に苛立ちを見せていたが、外務省は正にそれに呼応するが如く、日台断交後では異例の外交文書を総統府に手交し、陳氏の住民投票政策に「慎重な対処」を申し入れるという内政干渉に手を染めた。
 
これが中国の意に沿わんとして行ったことは明らかだった。なぜならその翌日、中国側は直ちにこれを「義挙」と讃えていた。
 
(4)今回の「総統」削除事件も中国のために起きたか
 
そしてそれだけではない。問題の文書を作成したのは当時の外務省中国課(現中国モンゴル課)の堀之内秀久課長。その独断での干渉だったとの見方も報じられたが(川口順子外相は後に「政府の指示」と証言)、いずれにせよ中国課は当時、「台湾当局への申し入れについて」なる報告書を認める。そしてそこには何と次のようにあったのだ。
 
―――29日、内田勝久・交流協会台北事務所長より、邱義仁「総統府」秘書長に対し、以下の我国政府の立場を伝達した。
 
―――最近の陳水扁「総統」に拠る公民投票の実施や新憲法制定等の発言は、中台関係を徒に緊張させる結果となっており、我が国としては、台湾海峡及びこの地域の平和と安定の観点から憂慮している。
 
以上の通りだ。中国の指示に沿う形で「総統」や「総統府」にわざわざ鍵括弧を付けている。当時の川口順子外相は国会でこうした非礼行為の責任の所在が追及されると、台湾を国ではなく地域として扱うためだと釈明したが、しかしそれと同時に、同じ地域であっても北朝鮮に関しては、こうした括弧附きの表記は行っていないことも認めざるを得なかった。
 
それでは、今回の政府による「総統」の二字の削除も、やはり二〇〇三年の事件と同様、中国の影響を受けてのものだったのだろうか。
 
(5)「総統」と書きこんだだけで猛反撥した中国
 
実際に安倍氏がメッセージに「蔡英文総統」と宛名を書きいれたことに、中国は猛反撥していた。あの国の外交部報道官は九日の定例会見で、次のように述べているのだ。
 
「私が強調したいのは、日本が災害見舞いの名を借りて、国際社会で公然と『一つの中国、一つの台湾』を作り出し、『一つの中国』原則に違反し、日本の台湾問題に関する約束に違反したということだ。中国はこれに極めて強い不満を持ち、すでに日本側とは厳正なる交渉を行っている」
 
このように中国側が猛反撥してみせたのには、日台接近への警戒感も働いているはずである。台湾併呑の戦略上、日台はどうしても離間しなければならない対象なのだ。
 
それにしても、外交部の主張にはいいがかりが含まれている。日本政府はこれまで台湾を中国の領土の一部と認めたことはなく、「一つの中国」原則違反を責め立てられる筋合いはないのである。
 
もっともそれは、日台離間のためのいつもながらの印象操作であり、その問題はここでは措くが、しかし少なくとも中国政府は、日本に抗議を行っていたことがこれで判明した。
 
(6)まったく納得いかない菅官房長官の説明
 
そのため、十三日の菅義偉官房長官の記者会見では、これに関する質問があった。
 
菅氏は中国からの抗議があったことは認めた上で、「総統」の削除は「より広く台湾の皆さん、台湾国民の皆さんへのメッセージとして掲載することが適当だという判断」によるものだったとし、中国の抗議によるものではないと強調した。
 
しかし誰がこれを信じるだろうか。
 
要するに菅氏は、蔡総統一人ではなく、より多くの台湾の人々へのメッセージに切り替えたというのか。すでに蔡総統に宛てて発出したものを、後になってHP上でわざわざ宛名を書き換えたというのか。そもそも今回の総統宛のメッセージは総統個人宛ではなく、台湾の国民全体に対するものだったはずだ。
 
実際に安倍氏は二〇一六年の台湾南部地震に際しても、当時の「馬英九総統」宛に慰問メッセージを発出し、政府はいまだ宛名の書き換えを行っていない。
 
実は多くは気が付いていないが、HP上から削除されたのはタイトルや、宛名の「総統」の二字だけではない。メッセージ末尾にあった「2018年2月8日」という日付や「日本国内閣総理大臣安倍晋三」との差出人名までも消し去っているのである。
 
菅氏はこれについても、「より広く台湾の皆さんへのメッセージとして掲載する」との判断だったというのだろうか。そんなバカな話は言うまい。
 
(7)実は「内閣総理大臣安倍晋三」の名も削除されている
 
要するに「総統」削除を決めた下手人は、総統に対する非礼行為だとの批判を避けるため、日付、差出人名をも削除して、メッセージ本文だけの掲載というスタイルにしたのだろう。自らの非を悟った上での一種の隠蔽工作に見える。

二〇〇三年の外交文書もそうだが、政府がこうした台湾侮辱の行為に敢えて出るときは、必ず中国の圧力が働いていると見るべきだろう。
 
二〇一六年の「馬英九総統」宛のメッセージを問題視しなかったのは、それは中国からの批判がなかったからではないのか。中国は陳水扁政権や蔡英文政権とは違い、「一つの中国」を掲げる馬英九政権が日本政府と関係を深化させることに関してはとても寛容だった。
 
さてこの隠蔽工作の下手人だが、実は我々民間はHPでのメッセージ改竄発覚直後から責任追及に乗り出していた。
 
私が官邸HPを管理する内閣広報室に電話すると、「HP担当者のミス。それで削除しました。ご迷惑をおかけしました」と平謝り。つまり担当者が原稿にもない「蔡英文総統」の文字を間違って書き入れてしまったというのだが、そんなことがあるだろうか。
 
(8)明らかに中国迎合のための台湾侮辱事件
 
ところがその後に「ネット保守連合」事務局のたかすぎしんさく氏が電話で同室に電話で執拗に追求すると、やや真相が明らかになってきた。「外務省の指示だった」と白状したのだ。そして「中国モンゴル課」からの指示だったことも仄めかせた。
 
やはり二〇〇三年の事件と下手人は同一らしい。
 
そこで、たかすぎ氏は同課に対して責任追及を開始したのだが、相手は「上からの指示。しかし誰からの指示からは分からない」として口を割らない。「中国モンゴル課ではなく政府としての判断だ」とも言っていたが、それはまさに「政府の指示」と二〇〇三年の事件当時と同じセリフではないか。
 
このように中国に迎合するがゆえの台湾侮辱というのが、今回の事件の真相だろう。そうした事実を隠蔽するために、中国モンゴル課も必死なのだ。
 
そしてこれこそが、政府の実態である訳なのだ。
 
(9)このような媚中政府だから「総統」削除は当たり前
 
ここでもう一つ、その実態を示すエピソードを紹介したい。
 
前述のように、菅氏は記者会見で「台湾国民の皆さん」と発言したのだが、内閣広報室が製作した映像では、その場面に「(誤)台湾国民(正)台湾の方々」とのテロップが映し出された。要するに「台湾国民」と呼べば台湾を「国」と認めたと中国から批判されるのを恐れたのだ。
 
ここまで中国に過剰配慮するのは、内閣広報室の判断によるのか、それともまたしても外務省中国モンゴル課からの指図だったのか。
 
いずれにせよこのような政府だからこそ、「総統」の二字を削除するのは当たり前だったと言える。
 
今回の安倍氏のメッセージが台湾で反響を呼んだのは、台湾が中国の圧力によって国際社会で孤立を深める中、日本の首相としてあそこまで温かいメッセージを台湾に送ったからなのである。ところがそうしたせっかくの友情、勇気、努力を媚中勢力は揉み消しにかかったのだ。
 
先に「安倍氏ならびに日本政府への信頼を大きく傷付けかねないほどの不祥事」と書いたが、それはそういうことなのだ。