2018年11月18日(日曜日)
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連載第20回 北朝鮮の漁船 野牧雅子(宮塚コリア研究所研究員)

連載第20回 北朝鮮の漁船
野牧雅子(宮塚コリア研究所研究員) 

 

 去年、平成一七年一一月二九日、北海道の松前町沖で漂流していた北朝鮮漁船が発見され、巡視船により函館沖に曳航された。北朝鮮の漁船は実は何年間もの間、かなりの頻度で日本に漂着している。松前町の事件の前、一一月二四日には、秋田県由利本荘市にやはり北朝鮮の漁船が漂着しており、住民の通報で分かった。
 
 松前町に保護された北朝鮮漁民は、しばらく、日本のメディアの注目を浴びた。まず、彼らは巡視船と漁船とを繋ぐロープを断ち切って逃走を試みた。
また、松前町の離島である松前小島に何日か宿泊していて、そこにある家電やバイク、シャンプーやドアノブまでをも盗み、ものを食べたらしく、調理の跡さえあり、さらには、ボイラーや発電機も壊していたとのこと。これは日本国民を驚かせ、ニュースの好餌となった。
 
 加えて、窃盗容疑で船長が逮捕される映像がテレビニュースに流れたが、その男が抵抗し暴れている様子がはっきり映し出され、これも、話題となっていた。
 
 ニュース記事をもとにして作られるテレビやネットの番組では、さまざまなコメンテーターが登場して、北朝鮮の漁業について話したため、「大和堆」などの言葉や、北朝鮮の農業や漁業は人民軍も利権をもっているなどの知識が日本国民に定着した。コメンテーターの中には、漂着した者たちは漁民を装った軍人やスパイである可能性があるのではないか、と指摘する者もいた。
 
 夫の宮塚利雄(宮塚コリア研究所所長、元山梨学院大学教授)は、長年にわたり、北朝鮮の漁船についての情報を集めている。彼に言わせると、質素な船でも、上質なエンジンと燃料があれば、日本海には楽に来ることができるとのこと。特に海流に乗れば、簡単に、日本にたどりつけるのだそうだ。が、漁船には性能の悪いエンジンしかついていないので、日本に船が流れて来るのだ。北朝鮮漁民の間では、海流に乗ると新潟に着く、という「神話」まであるそうである。
 
 エンジンも軽油も出航時に当局から支給される。そのエンジンは中国製のお古で、質が悪い。
さらに、燃料の軽油は不純物が混じっている粗悪なもの。危険でも、儲けをピンハネされても、漁民は漁に出たがるそうである。出航時に燃料を配給されるとき、もっと多くくれ、と漁師は当局者にごねるという。出航時には燃料配布とともに、各漁船の点呼も行われている。
 
 船はどんなに質素な船でも、登録されている国家財産である。メディアには生きて漂着した漁民のニュースが多く取り扱われるが、日本海側に漂着する北朝鮮の木造船に乗っている漁民は、すでに遺体になっていることが多い。誰も乗っていない船もある。
 
 さて、北朝鮮のスパイには色々の種類があるが、北朝鮮で語学や専門知識の訓練を受けて海外に派遣される工作員には、確実に目的地にたどり着けるよう、配慮がなされている。死ぬ可能性が高い漂着民を装って地元住民にあやしまれるような者を送り込むことはまずない。
日本にはすでに昔から何万人もの北朝鮮工作員がいて、日本の海岸をくまなく調査し、夜陰にまぎれて接岸しやすい場所が数十か所、特定されている。
そこに接岸される船には、もっと優れたエンジンがついているのだ。
 
 北朝鮮の漁船漂着問題で、日本にとって危険なことは別にある。
まず、彼らが飢えていることである。松前小島で、地元の日本漁民の宿泊施設の家電を盗んだ、という件に関してだが、北朝鮮ではいかにもあり得ることである。
かの国では時々、肥料を何グラム国に治めろ、というおふれが国民に下される。しかし、そう簡単に肥料など手に入らない。
そこで、トイレの糞尿をためておくのだが、盗まれないように、ドアの外から鍵をかけるという。(北朝鮮では屋外にトイレがある家もある。)
また、庶民はよくリヤカーでものを運ぶが、用事があってその傍を離れるときは、必ず、誰かに見張りをさせる。そうでないと、盗まれるからだ。
北朝鮮の人はパンティの腰の後ろのところに小さな袋を縫い付け、その中にお金を入れる。ここが一番盗まれにくいからだ。
このように、彼らはいつも「盗まれる」ということに対して、用心している。つまり、北朝鮮には盗む人が多いのだ。
 
 北朝鮮の国境に面した中国の延辺では、よく、「親戚訪問」という言葉を聞く。川向こうの中国に親戚を持っている北朝鮮の国民は、一か月ほど、中国の親戚宅に滞在することが許可されることがあるのだそうだ。許可の基準などについてはよくわからないとのことである。
親戚訪問で北朝鮮の親族を迎える中国朝鮮族の人達にとって、これは、ちょっと、気の重い期間であるらしい。親戚のため邪険にできないが、それほど嬉しいものでもないらしい。
 
 こんな話を聞いたことがある。朝鮮族のある年配の婦人の従兄が北朝鮮から来る、という報告が、その婦人に入ると、彼女は自分の娘夫婦や息子夫婦に電話して、この期間はおばあちゃん(その婦人のこと)の家に来ないようにと言う。一度でも会ったら、北朝鮮のその従兄が、息子や娘の家庭に泊まりに行くからだ。
 
 北朝鮮からの従兄が泊っている間に、壁にかけておいた革ジャンパーがなくなったりする。色々品物をおみやげに持たせるのに、けっこうお金がかかる。親戚とは言え、何かをもらいにくるわけだから、度重なると、親しい心情がわかなくなるらしい。こんな話はたくさんある。
 
 北朝鮮では親戚訪問から帰った人を家族は待ち受けて、一家の食事をするわけだが、その時、窓や天戸をきちっとしめて、夜、暗がりで、静かに物音をたてないように、話をせず、そっと食べるという。
なぜなら、親戚訪問について、いくら秘密にしても、近所に知られており、明るくして賑やかに食べていると、近所の人々が押し寄せて、おすそ分けしてほしい、と頼むのだそうで、断ると人間関係にヒビが入ったり、いろいろと面倒なことがあるためであるという。
 
 中朝国境の延辺(豆満江側)には三合鎮という村がある。対岸は北朝鮮の会寧という町。
三合鎮のある農家が一家団欒で食事をしていたら、向かい側の北朝鮮から人々が来て、その家にあるものをすべて食べ、二百元を取り上げ、挙句の果てに、一家を皆殺しにした、という事件もあった。三合鎮では、北朝鮮から人々が来て埋めてあるキムチを泥棒するなど、よくあることなのだが、一家皆殺しは衝撃的だったようである。
 
 だから、松前小島の漁民小屋に日本人がいたら、家電を盗まれたぐらいではすまなかった可能性も十分にあるのだ。
 飢えているのだから、豊な家に押し入ってものを食べたり、盗んだりするのは理解できるとして、何も人殺ししなくても、と日本人なら思う。
しかし、北朝鮮では勝手に川向うに行ったというだけで大罪であり、ものを盗んだ、食べた、ということがばれたら、強制収容所、公開処刑、など、どんなことが待ち受けているかわからない。だから、殺してしまうのである。
 
 松前小島で窃盗をした漁船の船長が逮捕時に暴れる様子も、北朝鮮の人なら、よくある話である。北朝鮮では、逮捕される者が、抵抗したり、怒ったり、暴れたりすることはよくあることだ。
場合によっては家族も連座して強制収容所に入れられるかもしれないし、さして悪いことをしていなくても、あるいは何も悪いことをしていなくても、日本なら罪でないことでも(金日成の写真の枠に埃がたまっていたなど)、罪になるのだ。
特に、ここ数年は、労働鍛錬刑なるものが、気軽に適応されて、一家の主人が行き成り連れて行かれることがよくある。労働鍛錬刑とは、罰として、労働をする、という刑で、わかりやすく言うと、ただ働きの刑である。
冤罪や、こじつけによる刑も多く、逮捕時に、連行される人やその家族が抗議したり抵抗したり、暴れたりすることがあると聞く。
なお、この労働鍛錬刑は、北朝鮮では重要な労働力となっている。
 
 危険なことのもう一つに、松前小島漂着の北朝鮮漁民の一人が結核であったとのこと。韓国の板門店で銃弾にあいながら亡命した兵士のお腹には寄生虫がどっさりいた。
 
 北朝鮮では衛生状態が悪く、板門店の韓国軍人たちは、着任時に強い予防注射を受けると、当地のガイドが言っていた。
さらに、板門店から他の地へ転勤する時は、その時接種された注射を中和するための注射をするという。
日本の地を踏んだ北朝鮮漁民が感染の恐れがある病原菌を持っている可能性も高く、対処が大変だ。
北朝鮮では、人間だけでなく、家畜の衛生も悪く、口蹄疫、狂牛病、鳥インフルエンザ等、さまざまな家畜の感染があるのではないか、という予測がある。家畜の病気の中には人に感染するものもあり、戦時下の混乱には周辺諸国に甚大な被害が及ぶと予想される。
結核や鳥インフルエンザは恐ろしいが、性病も燎原の火の如く広がるに違いない。
 
 北朝鮮と周辺諸国、関係諸国との関係は予測不可能ではあるが、少しずつ、あるいは、一挙に、北朝鮮から人々が周辺に出てゆくことが考えられ、諸国は武器による危機ばかりでなく、窃盗、殺人、病気の感染などへの対応、国民性による文化摩擦、などに苦慮することになるであろう。
 
 なお、夫の宮塚は若いころ、韓国に留学していたことがある。彼が留学する前のことだから、四〇年以上前、板門店から韓国に銃撃を受けつつ亡命した男がいた。彼は、労働党新聞の編集長だか、主筆だかのエリート。韓国に定住し、梨花女子大学の先生と結婚し、市民生活を送っていた。名を李秀根という。銃撃を受けたので、世間では彼を疑う者はいなかった。
しかし、当時、情報機関であった安企部の者達が、彼の行動を怪しみだした。安企部で李が銃撃された時のビデオ映像をよく見てみると、北朝鮮兵士たちの銃弾は、李の足にのみ集中していた。まるで狙っているように足に集中していた。
 
 安企部は李が北朝鮮のスパイであることを確信し、李を張り続け、証拠を固めていた。李も自分がスパイであることを悟られ、このままでは捕まると気づき始めた。
李は香港から中国へ逃亡しようとして、韓国から飛行機に乗った。香港で一旦降りて、中国行きの飛行機に乗り換えるため、搭乗口を通過し、機内に入り、シートベルトをしめた。搭乗した飛行機が滑走路を走り、機体が宙に浮かび、北京を目指して飛び出した頃、李の席に何人かの男が近づいた。李は機内で逮捕され、飛行機はもう一度韓国の空港へ戻った。
 
 しかし、去年、銃撃の中、亡命した兵士はわりと下っ端なのだそうで、さらに、お腹に寄生虫がいたり、北朝鮮のとうもろこしのカスを持っていたりと、北朝鮮の恥をさらすような人物であり、スパイではなさそうである。
 
 話はそれるが、北朝鮮兵士のお腹の虫について発表した医師は、左翼系の者に、どうして北朝鮮の恥をばらすのか、と非難され、マスメディアに突き上げられているのだそうである。何と気の毒なことであろう。
それにしても、北朝鮮の兵士のお腹に寄生虫がいることを知っているほうが、韓国民にとって、良いことではないだろうか。これからの対策のために。
 
 北朝鮮は韓国に、寄生虫だけでなく、美女軍団も送り込むが、日本には死体を送る。
しかし、よく考えてみよう。漁船や遺体と、大勢の美女とどちらが恐ろしいだろう。美女のほうが恐ろしいではないか。

 
写真1
北朝鮮、羅先港。イカが干してある。日本に漂流する北朝鮮漁船もイカ釣り漁であることが多い。北朝鮮と中国を行き来して商売をしている人に聞くと、北朝鮮のもので、商品価値のあるものは、海産物しかない、と言う。イカやその他の海産物は中国側の国境の街でも大量に売られている。平成二四年七月八日、友人が撮影したもの。
 
写真2、写真3
 北朝鮮漁船。鴨緑江丹東から新義州を撮ったもの。平成二一年三月撮影。北朝鮮の木造漁船は、なぜか、平底が多い。質素な船だが、国家財産である。
 
写真4、写真5
 中国、延吉市(豆満江側)西市場。平成二五年三月撮影。北朝鮮からの海産物がたくさん並んでいた。