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【今さら聞けない皇室の基礎知識】 「聖徳記念絵画館」   村田春樹(今さら聞けない皇室研究会顧問)

明治神宮外苑の再開発に伴い樹木が伐採されるそうだ。

神宮外苑は国立競技場・神宮球場・秩父宮ラグビー場等があり、スポーツの殿堂である。しかしメイン(中心)の建物は「聖徳記念絵画館」である。

あの有名な銀杏並木の延長線上に鎮座するこの古風な建物を見知っている人は多いが、それが聖徳記念絵画館であることは知られていない。館内の絵画を観賞したことがある人は滅多にいない。我が保守尊皇業界にして殆ど知られていないのだから世間的には全く無名である。しかしここは穴場中の穴場である。明治天皇の御降誕から崩御までが、国内有数の画家の絵画(前半生は日本画、後半生は油絵)で語られているのである。美術史的にも貴重であり、名画を鑑賞しながら明治天皇の御事績(聖徳)ひいては明治時代そのものを学ぶことができる。

私は何回も見学したが、いつ行ってもがら空きであった。もったいないこと甚だしい。天皇は明治四十五年七月三十日に崩御されたが、臣民の追慕の念やみがたく大正九年十一月一日明治神宮が鎮座(国費)、外苑は民間からの寄付を募り「明治神宮奉賛会」が整備建設した。フランスのヴェルサイユ宮殿の「戦争の間」では絵画を通じて太陽王ルイ十四世の事績を知ることができる。ルーブル美術館の「ルーベンスの間」では絵画を見つつ、マリー・ド・メディシス(イタリア名マリア・デ・メディチ、アンリ四世の王妃でルイ十三世の母)の生涯を知ることができる。これに倣い日本でも絵画を鑑賞しながら明治天皇の聖蹟を偲ぶ美術館の建設が決まった。大正八年に着工、途中関東大震災に遭うも些かも崩れず、しかし工期は遅れ大正十五年十月二十二日に竣工した。設計は小林正紹、彼の作品、現存する建物では拓銀小樽支店(現似鳥美術館)枢密院(現皇宮警察本部)がある。エアコン・水洗トイレ・防火シャッター等当時としては最新の設備を備えていた。平成二十三年には国の重要文化財に指定されている。

フランスの前例と異なる処は、八十枚の絵画を全て別々の画家に描かせ、美術界の発展に寄与せしめんとしたことである。まず二世五姓田芳柳(ごせだ ほうりゅう)が下図(考証図)を書いて各画家に渡し、画家がそれを参考に役立て各々独自の絵画に仕上げていったのである。大正十五年の開館当初は五枚しかなかったが、漸次増えていき昭和十一年に八十枚すべて揃うこととなった。画家への報酬であるが、奉賛会は財閥や絵画に登場する人物に「奉納」を呼びかけてまかなうこととした。

爾今本欄では絵画一枚一枚を説明しながら、皇室への基礎知識を学んでいきたい。

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