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【三芳雑記】『西尾末廣』再評価に役立つ本

子供の頃、伝記が好きだった。キュリー夫人や野口英世の定番から、和井内貞行や島義勇まで、学校図書館にそろえられている伝記を読みまくった。大人となっても、人物評論は好きである。田沼意次や河合栄治郎、西尾末廣などを書いた江上照彦相模女子大教授が「日本では伝記作家の地位が低くてねえ」と嘆いておられたことを思い出す。以上が前置き。以下は本題。

このたび梅澤昇平尚美学園大名誉教授が『西尾末廣』(展転社)を上梓した。著者は民社党本部の職員だった人(後に広報局長)。民社初代党首の身内とも言える。

つまり西尾の生前は、党首と若手職員の関係だ。戦前からの労働運動家で政治家でもあり、戦後、片山内閣で官房長官、芦田内閣で副総理を務めた西尾は、いわば〝雲の上の人〟であった筈。その〝距離感〟が本書に緊張をもたらしている。

西尾の親族や民社党関係者にもこまめに取材し、国会図書館、大原社会問題研究所、友愛労働歴史館にも通い、社会党幹部会メモなど新たな資料も発掘している。何よりも西尾側近の和田一仁元秘書(後に衆院議員)や田口幸子元党本部書記(国際局事務局長)などの〝生の声〟を伝えられているのがありがたい。岸側近の福田農林大臣が何度か西尾と面談し、「岸後継として立つべし」と説得された件など、和田にも一切知らされていなかったとは驚いた。

西尾は日本の共産化を防ぎ、皇室の伝統を守り、国防の強化と憲法改正にも言及した、国家の繁栄と安定を第一と考える政治家であった。「世界は資本主義対社会主義」との意見がまかり通っていたとき「それは違う。民主主義対全体主義」だと言い切ってもいる。ウクライナ戦争が起こっている現在、再評価すべき人物であろう。 (融)