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切り口が鮮やかな青木雨彦流

青木雨彦(本名・青木福男)さんをご存知か。「一九三二年、横浜生まれ。新聞記者、編集者を経てコラムニスト、インタビュー屋という名の売文業」と著書の経歴紹介にある。一九九一年に亡くなられているから、二十年以上前に活躍されていた人だ。評者は同氏にインタビューしたことがあり、腰が低い方で忘れがたい。

雨彦さんの代表作は『週刊朝日』の巻頭で一九七二年から六年間連載されていた「人間万歳」である。「時には鋭く、時には暖かく、きわどい言い回しの中にも細やかな思いやりを感じさせる」インタビュー・エッセイ。後に男性、女性の二冊となって、けいせい出版から書籍化されている。

「『男はつらいよ』とは言わぬ監督」山田洋次の項では「大船の松竹撮影所で、それも、昼休みに……ということで、お会いした。(略)その献立は……と見れば、イワシの干物、大根の切干し、ホウレンソウのおひたし、トウフの味噌汁、それに、お新香といったところだ。寅次郎のセリフではないが、『労働者諸君、きみらは貧しいなあ』――いや、ジョウダンじゃなく、これが日本映画の浮沈を肩に背負った男の昼飯ですか?」とくる。鮮やかな切り口ですな。

男性篇には「ノッポでハンサムな総司は母思いのハーフ」草刈正雄や「『幸せだなァ』と歌いつづける中年の若大将」加山雄三などがあり、女性篇には「どこにでもいそうでいない〝ゴテロク〟少女」大竹しのぶや「アンチ『スタ誕』育ちの実力派」石川さゆりもあって、「隠れた素顔を引き出す見事な職人芸」に圧倒された。かつて新聞各紙に「人」欄があって、旬の人物の紹介記事が姸を競ったものである。いまは技量が問われるイタンビュー記事が少ない。これも新聞低調の要因の一つか。   (融)