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【論説・コラム】予定調和を崩した新しい映画『怪物』

※映画『怪物』公式HP

 

5月にフランスで開催されたカンヌ国際映画祭にて、脚本賞などを受賞した是枝裕和監督『怪物』を観た。

 

是枝作品といえば、過去に『そして父になる』『海街diary』『万引き家族』など、社会の中で置き去りにされがちな家族関係の問題を、象徴的な背景描写と共に描くことに長けた監督というイメージがあった。

 

とくに押し付け的な答えを提示するわけではないものの、社会問題や家族問題を扱った作品は、やや重い展開になりがちなので、観る前にそれなりの気合いやカロリーが必要となる。今回、国際映画祭で評価された話題性を動機づけにして、シネコンに赴いた。

 

少々ネガティブな気持ちで観始めたせいか、中盤までの展開で正直に言って席を立とうかと思う時間帯があった。決して駄作ではないものの、母子家庭の苦労が剥き出しに描かれる展開の中で学校のいじめや加害教師、責任転嫁の問題が追加されていって、「ああ、やっぱり負の側面ばっかり描くヤツか」と、気分がどんどんと萎えていったのだ。

 

ところが、後半の展開はこれまでの映画では観たことがない新鮮なものだった。カンヌにて脚本賞だけでなくクィア・パルム賞(LGBTやクィアをテーマにした映画が対象)を受賞したように、昨今の映画界の流れに沿ったテーマも後半で浮かび上がってくるのだが、それだけを描いているわけでもない。

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