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山口瞳さんをまた読んでいます

いま山口瞳著『私本歳時記』(新潮社)を再読している。初出は「男性自身」だ。「週刊新潮」の見開き二頁連載。身辺雑記のエッセイや日記で構成されていた。それが、同じ四千二百字でも、短編小説を発表していた時代もある。その短編が「私本歳時記」として結実した。「青蜜柑」「露時雨」「雪催い」といった季語に託して、男と女の、いや人生の葛藤や彩が、淡くしっとりと綴られている。面白く、見事です。

当方が三十七、八の頃に週刊誌連載で一回、単行本でもう一回と二回読んでいる。

しかし、今回も新鮮なのだ。佳作は四十年近く経って三読しても、佳作なのです。

わが本棚には夏目漱石、井伏鱒二、吉川英治、向田邦子などお気に入りの全集がそろっている。内田百閒、阿川弘之、宮脇俊三、江國滋、子母澤寛ら、再読を待っている小説、エッセイ、紀行文も多い。

 よい作品というものは、繰り返し読んでも、暖炉で古酒を味わうような深みを感じる。否、飲めば減っていく酒とちがって、良書は何度でも楽しめる。

 映画だって同じこと。このところDVDなるものの出現で、幾度も見直している作品がある。「七人の侍」や「東京物語」、「ローマの休日」などがそれで、毎回、新たな発見があって驚かされている。ただし、「七人の侍」を観終えると、「映画は、やはり映画館で観るものだな」と感じますがね……。

 山口瞳さんでは、出世作「江分利満氏の優雅な生活」を、読み返してみたい。

話はまったく替わる。東海林さだおさんの「サラリーマン専科」や「タンマ君」が延々と続いている。作者は確か八十五、六歳の筈。軽妙な文章も書く。怪物ですね。 (融)