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【論説・コラム】常識はある日を境に非常識となる

※イメージ画像

 

ハッとする相手の非常識に戦慄をおぼえる瞬間がある。

 

契約関係で書類を受け取る際、準備を終えた担当の初老男性が私(記者)に控え用の二枚綴りの二枚目の用紙を捲る際、右手指を唇に運ぶ仕草を確認した。すかさず「あ、自分でやります」と言って紙を確保し、自らの乾いた手を摩りながらどうにか二枚目を捲り、自分の分を確保した。

 

社会人になって約30年。何度この「指ペロ」に不快感を抱いてきただろう。相手に差し出す書類や書籍に何の疑問もなく、指にべっちょりと唾液を付けて触る。後で確認すると、湿って紙が撚れていたこともある。無論、悪気がないのはよく分かっている。高齢になれば体に瑞々しさがなくなり、紙を捲るのに苦労するのも分かる。相手の時間を削るまいとする親切心も多少は働いているのかもしれない。

 

がしかし、唾液の付いた紙をその後に確認すると、何か言い知れぬ嫌悪の感情が沸き起こる。私と同じ団塊ジュニア世代以降であれば、誰しも同じ心境を経験したことがあるのではないだろうか。親の団塊世代は、唾液だなんだと気にする暇もない幼少期や青春期を過ごし、前時代の祖父母が躊躇せずに行っていた風習をそのまま引き継ぎ、紙を捲る際の常識として「指ペロ」を認識したに違いない。

 

自分の幼少期などを思い出しても、それを見て特に不快になることはなく、むしろピッチャーが滑り止め用のロージンバッグを拾い上げて樹脂の粉を手に付けた後でペロっとやるのと同じような、「プロの仕草」という眼差しで捉えていたと記憶している。いつしか、そんな憧れや尊敬の仕草から、顔を顰めたくなるほど不潔で無礼な仕草だと受け取るようになっていた。

 

契約の書類受け取りが終わり、近くの図書館に行くと、「指舐め禁止」とイラスト付きの注意書きが大きく壁に貼られていた。

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