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書評「中国共産党─毛沢東から習近平まで 異形の党の正体に迫る」小滝透著 ハート出版 三浦太郎(評論家)

この4月6日、ハート出版より、小滝透氏の著書『中国共産党─毛沢東から習近平まで 異形の党の正体に迫る』が出版される。小滝氏とはもう20年も前のことになるが、私は政治学者、殿岡昭郎氏が発行していた「中国民族問題研究」というミニコミの関係で、小滝氏とともにトルコのイスタンブールを訪れた。その時は、トルコに亡命していたウイグル人たちが結成した「東トルキスタン亡命政府」の取材などを兼ねていた。現地で、世界中のトルコ系民族による採点が開かれ、そこで東トルキスタンの旗と日章旗が翻ったのも懐かしい思い出である

 

この時小滝氏にイスラム教についての初歩的、しかし本質的な講義を受けたことは、その後の私には大変役立つものとなった。その後、小滝氏と個人的に交流が続いていたわけではないが、イスラム教、ユダヤ教についての小滝氏の著作は共感しつつ読んできた。同時に、小滝氏は中国共産党の、特に各民族への植民地支配に対する厳しい批判者であり、日本においては南モンゴル運動への支援者でもある。本書はその小滝による中国共産党論であるとともに、近現代中国の通史であり、さらには未来の中国、そして日本の行く末をも予見している。

 

 中国が欧米列強の侵略を受け、アヘン戦争等での手痛い敗戦を受けたこと、それによって中華思想に基づく冊封朝貢体制が完全に崩壊したことをまず小滝氏は指摘し、さらに、太平天国の乱と、義和団の乱を、それぞれの視点から分析してゆく。

 

まず、太平天国の乱は、いかにこじつけや誤解があったとしても、キリスト教という西欧イデオロギーに基づく平等社会の実現と清朝打倒を目指した。これにより「上帝(神)を至上の存在とすることで、皇帝至上主義を取る王朝」を否定される。これに対し、太平天国と戦った漢人部隊は、伝統的な儒教や、民間信仰である関羽崇拝を思想的な対抗軸とした。これ以後、太平天国の乱に伝統破壊の意思を観た知識人や民衆の中には、西欧列強の侵略に対抗する意思も伴い、強力な反キリスト教主義と排外主義が高揚していく。これが義和団の乱である。

 

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