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娘に「このミサイルは外国から盗んだお金で作ったんだよ」と言わなかった金正恩  宮塚利夫(宮塚コリア研究所所長)

 北朝鮮の朝鮮中央通信は19日、大陸間弾道ミサイル(ICBМ)「火星17」の試射が18日行われ、立ち会った金正恩総書記に娘が同行したとして写真を公表した。金総書記の子供について初めての公式な報道であった。同通信は試射の現場を金総書記が「愛する子と女史とともに」訪れたと報道し、娘が金総書記と手をつないで「火星17」を見たり、金総書記と妻の李雪主氏の間で笑っていたりする写真を配信した。さらに同通信は27日、金総書記が18日に行われた「火星17」の試射の成功に貢献した兵士や科学者らと記念写真を撮ったが、同通信はこの時金総書記が「尊い子供と共に撮影現場に姿を現した」として18日の試射現地指導に続いて、娘と映る写真を配信した。一度ならぬ二度までも写真紹介されたこの娘を、北朝鮮ウオッチャーは金総書記の二番目の子供の「キム・ジュエ」と断定し、齢は9~10歳とした。金総書記には三人の子供がいると言われ、第一子は男の子で、第三子は女の子と言われているが、なぜ、第一子の男の子ではなく、二子の娘を同行させたのか。曰く「火星17が未来世代の安全も守るものと印象付けるため」、「未来の世代の安全保障に責任を持っていることを示すため」とか、「後継者に指名したから」「後継者としてお披露目した」と言う憶測まで出回っている。私に言わせれば北朝鮮のような家父長社会で齢僅か9歳の娘を「後継者にする」と言うことはあり得ないと考えるが、「それにしても親子同伴の職場見学、社会見学のつもりかもしれないが、核兵器と言う大量破壊兵器の開発現場に娘を同行させる金正恩氏のセンスは相当歪んでいるとしか言いようがない」(「統一日報」22年12月1日号 高談闊歩)。この娘は白いダウンジャケットを着て金総書記と手をつないで火星17の横を歩いたり、支持を出す父親を見守っていたというが、このミサイルの開発資金が「暗号通貨を盗みだして、ミサイル開発資金にしている」ことなど夢想だにできない話であろう。また、金総書記も娘に向かって「このミサイルはね、父が指示して外国の銀行や企業などから暗号通貨を盗み出すという、サイバー犯罪によるものだよ」とは努々言えないだろうし、娘も何ことやらと訝しがることもないだろうが。

さて、先月号の本稿で「北朝鮮のミサイル・核開発の資金源の”打ち出の小筒”は暗号資産

窃盗」と書いたが、韓国・外交部の金建韓半島平和交渉担当本部長は11月17日にソウルで開かれた「北韓暗号通貨奪取対応シンポジウム」で、「北韓(北朝鮮)は今年3月,『エクシーインフィニティ』と言うゲーム会社をハッキングして6億2000万ドルを奪った。

暗号資産窃取事件としては最大の規模であると言われている。たった一回のハッキングで上半期に発射した31発の弾道ミサイル発射費用をすべて賄うことができた」と暴露し、金部長はその費用を4~6億5000万ドルと推算し、「北韓による核問題の根底には暗号通貨収奪問題がある」と指摘した。また、同日、米国務省のジョン・パク対北特別部代表は「北韓は他国や企業、人々から金を盗み取る最も恐ろしい国だ。暗号通貨取引所は悪質なサイバー活動ができる収益を北韓に提供している。それは、国際金融システムを迂回して国連の制裁を回避し、兵器プログラムに資本を提供することだ」と述べた。

 韓国の国防研究院試算によると、大陸間弾道ミサイル(ICBМ)は1発で少なくとも2000万ドル、中距離弾道ミサイル(IRBМ)1000万ドル、短距離弾道ミサイル(SRBМ)は300万ドルの費用を要するという。米ランド研究所は25発のミサイルを発射した11月2日の一日だけで7500万ドルを超える資金が費やされたと分析した。慢性的な食糧不足に苦しむ北朝鮮が「ミサイルを発射するため、わずか二日間で2年分のコメの購入資金を失った」(韓国・国民の力太永浩議員)という。今年の北朝鮮の食糧生産は豊作とは言えず、私の好きな「黄金の糞尿弾投下」も功を報さなかったようだ。