shohyo「書評」

【書評】 「神様」のいる家で育ちました  菊池真理子著 文藝春秋発行 三浦小太郎(評論家)

 

この漫画は「宗教二世」、つまり様々な宗教(元統一教会、エホバの証人、幸福の科学、創価学会など。明記はされていないが読めばわかる)団体に属する親の家に生まれた人たちの証言を漫画化したものである。当初は集英社のネット上で連載されたが、抗議を受けて中止となり、今回、文藝春秋社から増補改訂の上発売となった.まず文藝春秋社に、出版社としての銀二を示し、この名作を世に出してくれたことに感謝の意を捧げたい。

 

確かに、ここで描かれている家庭の悲劇、時には自殺未遂にまで追いつめられる宗教二世たちの境遇は衝撃的だ。しかし、よく読めばわかるのだが、著者は決して信仰そのものを否定しているのではない。信仰が個人の内面も、本来いかなる信仰や政治イデオロギーからも自立した存在であるはずの、家族関係、親子関係、そして恋愛関係までも、信仰の名のもとに支配してしまうことを批判しているのだ。

 

家族関係において、人間は個人であるとともに、親であり、夫であり、妻であり、そして子供であるはずだ。ここには、外部の信仰やイデオロギーが決して侵入できない「愛の共同体」が存在する。両親と子供の政治的立場や思想、また社会的地位がいかに異なろうと、親と子供の関係はそれによって崩れるものではない。しかし、ここでの宗教二世の家族では、「愛の共同体」「家族共同体」が、完全に外部の信仰の価値観によって支配され、親子の愛情は二の次にされてしまっている。

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