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北朝鮮からのミサイル脅威に拱手傍観するのみの日本政府   --虚しい「北京の大使館を通じ北朝鮮に厳重抗議」の戯言――  宮塚利雄(宮塚コリア研究所所長)

 韓国軍の合同参謀本部は、北朝鮮が午前1時48分頃から10分ほどの間に東部の江原道文川付近から日本海に向け、短距離弾道ミサイル2発を発射したと発表した。ミサイルの飛距離はおよそ350キロ、速度はマッハ5程度。日本海では昨日までの二日間、アメリカ軍の原子力空母「ロナルド・レーガン」が参加する米韓合同演習が行われていて、北朝鮮がこれに反発したとの見方もあるが、明日10月10日は朝鮮労働党創立記念日を迎えるために、さらなる挑発予想される。

それにしても9月25日以降、北朝鮮が発射した弾道ミサイルは計12発になる。北朝鮮は米韓軍事演習の間はミサイル発射などを控える傾向にあったのだが、訓練期間に合わせて9月25日、28日、29日と相次いで弾道ミサイルを発射する挑発行為に及ぶのは異例である。専門家の間では「空母を含む米軍事力など意に介しないという自信を示そうとした」と言う意見もあるそうだが、4回の発射は夕方や夜間も含まれ、命中精度を高めるなどミサイル技術の向上を図る狙いもあったと見るべきだろう。北朝鮮国防省の報道官は10月8日、米韓両軍が米原子力空母を動員した海上訓練(7・8日)を実施していることについて、「地域情勢に及ぼす否定的な影響は非常に大きい」と非難し田さらに軍当局が「きわめて憂慮される現在の事態の発展を厳重に注意視している」とも述べ、さらなる武力挑発の可能性を示唆した直後の9日の弾道ミサイルの発射であった。9日に発射された弾道ミサイルは潜水艦発射弾道ミサイル(SLBМ)の可能性もあるという。

北朝鮮の報道官は、北朝鮮が9月下旬以降弾道ミサイル発射を繰り返したことについて、米韓が同時期に実施した「挑発的で威嚇的」な合同軍事演習に対する「正当な反応」だったと主張、日本上空を越えた10月4日の弾道ミサイル発射後、米空母ロナルド・レーガンが再び日本海での機動訓練に加わったことは「軍事的虚勢」だと非難した。話は10月4日に戻るが、日本政府は4日、北朝鮮が午前7時22分ごろ(日本時間)に弾道ミサイル1発を発射したと発表した。ミサイルは青森県上空を通過して同7時44分頃、岩手県釜石市から東へ約3200キロの日本の排他的経済水域(EEZ)外の太平洋上に落下した(落下ではなく着弾とすべきではないかとの意見もある)。最高高度は約1千キロ、飛行距離は過去最長の約4600㌔に達したという。この飛行距離は米軍が拠点を置くグアムを射程圏内に収め、延長線上にハワイを捉えたことで、米軍への威圧を強める結果となったが、問題は北朝鮮のミサイルが日本の上空を通過するのは平成29年9月以来のことであるが、日本側の対応まずさである。血管を露呈したのは、全国瞬時警報システム(Jアラート)である。Jアラートはミサイル攻撃の恐れを一秒でも早く国民に伝え、避難につなげる仕組みである。Jアラートの発令は、発射から訳5分後の午前7時27分。第一報は北海道と東京都の尾が澤村などの島しょう部が対象で、2分後の第二報で青森県と東京の島しょう部に変更されただが、同42分に上空通過を伝えた先は北海道と青森で実際には青森上空を通過した。青森市市や北海道の恵庭市など4市町村で住民への伝達がうまくいかないケースがあった。上空通過がなかった首都圏凹地、東京都の島しょう部で一時Jアラートが作動した8党との千代田区でも警報が伝えられたという)。総務省消防庁は北朝鮮の弾道ミサイルの発射を受けた全国瞬時警報システム(Jアラート)による住民への情報伝達で、北海道と青森県の計6市町で防災行政無線の放送が流れないなどの不具合があったと発表した。5年ぶりとはいえ「重大かつ差し迫った脅威」が現実化した事態で、Jアラートに不備があったのは問題と言わざるを得ない。岸田文雄首相は4日、官邸で記者団の取材に応じ、北朝鮮のミサイル発射について、「断じて許すことのできない暴挙」と非難し、松野博一官房長官は記者会見で「北京の血弛緩ルートを通じ、北朝鮮に厳重に抗議した」ことを明らかにしたが、いつもながらの常套句に過ぎない。北朝鮮はこれからも弾道ミサイルの改良発射と7回目の核実験を実施することが予想されている。北朝鮮の暴挙はまじかに迫ってきていることを実感すべきだ。