yukoku「憂国の風」

 『英霊の聲』再読  玉川 博己(三島由紀夫研究会代表幹事)

三島由紀夫の『英霊の聲』は昭和四十一年『文芸』六月号に発表された当時からその内容が刺激的であったがゆえに、論壇やジャーナリズムの中で評判となり、三島由紀夫がそれまでに発表した『十日の菊』と『憂国』とあわせて「二・二六事件三部作」と言われる様になった。『英霊の聲』はその後すぐに河出書房から初版が昭和四十一年六月三十日付で刊行されている。私が本書を読んだのはまだ予備校生であった昭和四十一~二年の頃である。初版本を持っていたが、その後友人に譲ってしまい、現在手元にあるのはその後求めた昭和四十八年刊行の第十一版である。

 

当時ジャーナリズムが問題にしたのは、戦後のいわゆる天皇制批判といえば左翼マルクス主義の立場からのものばかりであり、それとは全く異なる立場からの天皇批判がなされたということであった。「右からの象徴天皇批判」とかあるいは「人間天皇批判」ということがセンセーショナルに取り上げられた。また「などてすめろぎは人間(ひと)となりたまいし」というフレーズも話題となった。

 

三島由紀夫はこの作品に極めて強い思いを抱いていた。たとえば楯の会が結成されるとその会歌「起て紅の若き獅子たち」がつくられ、シングルレコードとして発売されたが、そのB面には三島由紀夫自ら朗読した「英霊の聲」(レコード・ジャケットには「英霊の声」と書かれていたが)が吹き込まれていた。その意味を世の人々が知るのは昭和四十五年十一月二十五日の市ヶ谷台決起を迎えてからであった。

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