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【マリの喫茶室】(79)  ―幼稚園児置き去り死で考える「不正のトライアングル」―

3歳の幼稚園児が送迎バスで置き去りにされ熱中症で死ぬという痛ましい事件が起きた。

運転をしていた73歳の園長の無責任な他人事態度、あまりにもずさんな安全管理はあきれ返るばかりだ。保護者会は紛糾し、おそらく怒りから過呼吸になり、多くの保護者が病院に運ばれたという。

事は安全管理以前の問題で、たった6人しか乗っていないのに、なぜ気が付かないのか、なぜ幼稚園バスの窓を全部外から見えなくしているのか、起こるべくしておきた事故ともいえる。

本当に痛ましい、悲惨な事故だ。いや事故という言葉では片づけられない。犯罪といってもいい。ぜひこの後は、司直の手で裁いてほしい。

本当は、5時間炎天下のバスの中で過ごす、という同じ目にあわせてやりたいが、それは日本の法律では無理である。(イスラム教ならOKだと思うが)

 

ところで、アメリカの犯罪心理学者のドナルド・クレッシーが唱えた有名な理論に「不正のトライアングル」というのがある。

これは、人が不正行為を働くのは、「動機」「機会」「正当化」の3要素がそろったときだというものだ。

例えば、万引きは、「動機:その物が欲しい」「機会:店員から見えないので可能である」「正当化:自分はお金がないのだから仕方がない。一方、この大きな店なら被害は大したことない。」といった具合だろう。

これを今回の事件に当てはめるとどうなるか。

犯罪は通常故意が前提だが、この件は、あまりにもひどいヒューマンエラーなので、園長の犯罪として考えてみた。

「機会:この日は運転手がいなくて自分が運転をした」

「動機:園児の確認は自分の仕事ではないのでやらない。(不作為の動機)」

「正当化:本来、運転は自分の仕事ではないし、園児の確認は他の職員の仕事なので、自分は悪くない。」

 

こういう悲惨な事故を防ぐにはどうするか。厚労省はマニュアルの改訂だの、チェックリストの作成だの、色々通達を出すだろう。

しかし、「人はミスをする」という前提にたつと、ダブルチェック、トリプルチェックも人間がやることなので、決め手にはならない。

物理的に防ぐのが一番効果的である。

韓国では、運転手が車のキーを抜くと自動的にブザーが鳴り、ブザーを止めるには、後ろの座席まで見に行って止めないと鳴り終わらない仕組みになっているという。こうすれば、車内に取り残された子どもがいないかどうか、必然的に確認ができる。

日本のある幼稚園では、幼稚園バスの扉を施錠せず、開け放しておくそうだ。こうすれば、たとえ置き去りされた子どもがいても、自力で降りてくることができる。

これがコストもかからず、すぐできて効果的だと思う。すばらしい。

子どもや障害者がこれまでも送迎バスで置き去りに亡くなっている。再発防止は、チェックリストではない。物理的対策が一番効果的である。ぜひ、明日から、送迎バスの扉はあけたままにする、を実践してほしい。

(京成バラ園のバラ)