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神社奉納画家 英霊への慰霊を描き続ける菅野泰紀氏

惜別の刻-戦艦大和

 

「これ、よほど細い筆使ってるんだよな」

「絵具も黒と白だけというのはいいよね」

「いやいや、これ写真でしょ!」

8月15日の靖国神社遊就館での軍艦絵画に見入っている人の会話。

思わず「あ、これね、鉛筆画なんですよ」と思わず伝えたら仰天された。

「まじ!? ほんとに? あ、確かに鉛筆だわ・・・」

 

一体どんな方がこのような精密で迫力のある絵が描けるのだろう。

そう思い、横須賀「記念艦三笠」で展覧会開催中の作者・菅野泰紀氏の絵画展を訪ねた。

 

菅野泰紀氏、昭和57年岡山県生まれ。広島大学文学部卒業・名古屋大学大学院を中退という画家としては珍しい経歴を持つ。

平成24年にKFSアートコンテストに入選、翌年には選抜展特別賞を受賞。

一枚の写真は1,000の文字よりもインパクトがあるという。将にそれを実感して欲しい。

何故モノクロ画なのか

広島出身の菅野氏は幼少の頃から戦時中の写真を見る機会が多かった。モノクロだけが持つ非現実的な現実という空間から溢れるような想像力をかきたてられ、深く心に刻まれたのがモノクロの写真であった。

何故鉛筆画なのか

一見写真に見える絵だが、実に細密に写真ではありえない人物なども書き込まれ、その迫力には見る者に驚きを与える。そして次にあたかも絵の軍艦や飛行機が動き出しそうな錯覚すら与えてくる。将に〈非現実な現実の空間〉を見る側に与えるのが菅野氏の絵である。

何故戦艦や航空機なのか

菅野氏の基本は日本を護るために戦った英霊への感謝に尽きていると述べている。そしてそれは戦争を知らない世代へその歴史の事実を伝えることに繋がっているのである。誇りと勇気、祖国への愛を抱きながら戦った英霊への慰霊が菅野氏の鉛筆艦船画なのである。

奉納・寄贈のための絵画

総ての日本艦船の中には「艦内神社」が設けられているが菅野氏は絵画を艦内神社の分霊元神社、更に全国の慰霊顕彰を行う神社へ奉納、関係施設・団体などへの寄贈を行うために絵を描くと述べている。

延12年に及ぶ作家活動のなかで約120枚もの鉛筆画を描き、各地での展覧会のほか、現在はハワイ・オアフ島真珠湾の戦艦ミズーリ記念館にて、日米の海軍艦艇を描いた鉛筆画16点を展示する企画展が行われている。国を問わず祖国のために戦った英霊たちへの鎮魂の絵画である。

一枚の絵画出来上がるまで

一枚の絵が完成するまでに要するのはおよそ2ヶ月、長いものでは2年もの時間をかけたものもあり、緻密で気が遠くなるような制作過程である。

基本的に使うのは、鉛筆・消しゴム・定規、この3点である。当時の写真や資料に基づきラフを起こし、更にそこから次のラフを、デッサン、そして構成が決まる。

最初は全体が鉛筆で塗りつぶされ、そこから消しゴムと鉛筆を駆使して完成させる。

菅野氏と制作中

七つ道具