tajikarao「タジカラオの独り言」

演劇「俺は君のためにこそ死にに行く」公演直前! 野伏翔(映画監督)

 確か以前読んだ渡辺昇一さんの「日本史から見た日本人」に書いてあった。「西洋では人は死後、唯一絶対神と対面し裁きを受ける。だが仏教伝来以前からの日本人の素朴な死後の世界感では、人は死後あの世へ行くと先祖や親兄弟と会える」と。そこから日本独特の「家」への拘り。古事記の時代から令和の現代まで連綿と続く天皇家との繋がりをも感じることができ、八紘一宇の精神の元で神代の時代から未来永劫に続いてゆくであろう魂の存在に、心の安寧を得ることができる。「お盆」には日本中でご先祖様たちの霊がご帰宅なさる。明治期、日本の特異な文化を「雪女」や「耳なし芳一」他の優れた文学で世界に紹介したラフカディオハーンは、日本を「死者の支配する国」とまで評した。

私は現世利益だけを求めることには生きる意味を見出し得ない。あらゆる宗教を禁じた共産主義独裁国家に於ける人心の荒廃はあまりにも醜い。中国では道端に人が死んでいても皆が見て見ぬふりをして通り過ぎる。関わりを持つと面倒に巻き込まれるという究極の利己主義が生み出した悲劇だ。人身売買、一兆円にも上るという臓器売買、チベットやウイグルの宗教の圧殺、遂には民族自体をジェノサイドするという狂気の政策は、正にこの世に地獄を現出させた。

私は今話題の統一教会のような異常な宗教を認めるものでは決してないが、人間には何らかの宗教心というものは必要と考える。それは「お天道様が見ている」という素朴な感情でも十分。昇る朝日に手を合わせ、夜空の星に祈るだけでも良い。人として恥ずかしくない行動をとっているかどうかと自問自答する気持ちだけは失いたくないものだ。

今は連日9月13日から18日までの演劇公演「俺は君のためにこそ死にに行く」の演出中である。今年二月に亡くなられた石原慎太郎氏の映画シナリオを原作に、私が脚本を書き演出する知覧特攻隊の青春群像劇である。コロナのせいもあり7年ぶりの公演であるが、今年は日本を取り巻く軍事的緊張が7年前とは比べ物にならないほど高まっているせいだろう、稽古にも一段と熱が入る。14日には皆で靖国神社に昇殿参拝し、酒井法子は知覧特攻基地記念館を一人で見学してきた。

鳥濱トメさん役には映画「めぐみへの誓い」で横田早紀江さん役を演じた石村とも子、特攻作戦生みの親大西瀧次郎中将役には名高達男、特攻隊員の妻良子役の酒井法子、その他総勢50人のキャストで迫力に満ちた舞台劇を創ります。たった一つしかない命を捨てて戦い抜いた若者たち。その生と死を見つめ、懊悩し、決断し、散華して行った若者たちの姿を描いた、感動の舞台となりますので、この機会に是非ご高覧ください。お申し込みはチラシをご参照ください。