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「台湾有事は、日本の有事」というのは言葉だけである。 川井正彦(一般社団法人 社会問題研究会)

台湾は、静かな時を過ごしているとは言えない状況である。

台湾を挟んで米中がにらみ合い、中国は牽制ではなく明確な威嚇を行ってきた。

現に、台湾近海に向けて弾道ミサイルを発射した。

その一部が日本のEEZ内に着弾したとも言われている。

この状況の発端は、米下院議長ナンシー ペロシ氏が台湾を訪問し、台湾の政府と接触したことにある。

ただし、ペロシ下院議長がどのような意図をもって台湾訪問を行ったかは、さまざまな意見があり、必ずしも、米台関係の強化であるか否かについては、少々疑問も残る。

そのことについては、必要であれば後日触れることにしておく。

いずれにせよ、米台、中台、米中という非常に複雑な関係が、民主的というよりも軍事を中心としたバランスの中にあることは言うまでもない。

日本の南西諸島から台湾まで、約110㎞とされており、それほど近接しているにもかかわらず、日本は、蚊帳の外というところである。

日本政府は、自国のEEZ内に弾道ミサイルが着弾してとしても、外交的抗議というパフォーマンスをすれども、軍事的プレゼンスを背景とする外交は、まったくできないことが明白となった。

この状況で、東シナ海を安全な存在と、日本はできるのだろうか。

私は、決してできるもではないと確信している。

中国が、ここまで実働的軍事力を背景とするのには、単に米台の関係への圧力だけではなく、中国国内問題も見え隠れしているのは事実である。

そのような複雑な状況があっても、日本はある意味無力であり、このままでは日本が取り残されたまま台湾問題が悪化の一途を辿ることは、間違いないのではないか。

故に、日本は、日米同盟を堅持したうえで、まずは、日台の独自的関係を強化する必要に迫られたと言っても良いだろう。

現実的に実行すべき方策としては、日本版台湾関係法を早期に成立させ、日台の関係性を強めるとともに、明確なパートナーであることを日本は示すべきである。

それこそが、沖縄を含めた日本の安全保障を確立することであると確信するものである。

先の大戦において、形だけであれ、官僚思考剥き出しの日本政府は、何ひとつ明確な判断を示さず、結果的に先送りしたことが、日本の敗戦を惨憺たる結果にしたことは言うまでもない。

また、統帥権を乱用した大本営が、日本に対して惨憺たる結果を招いたことは事実であり、このことを歴史の教訓とするのであれば、今こそ日本政府は、問題の先送りやことなかれ主義的外交をやめ、明確な方向性を打ち出すべきである。

ただし、軍事一辺倒でこのような問題は容易に解決できるものではない。

先の大戦においても、軍部中心思考で軍事優先的な判断を示したことが、大きな失策であり、この国を惨憺たる結果に貶めたことは事実である。

その当時と現在の日本が唯一違うとしたら、完全体とは程遠いとしても、議会が現存することである。

当時は、大政翼賛政治であり、議会など名ばかりで、機能など存在しなかった。

現在は、議会が曲がりなりにも存在し、国民の意思と声が反映するとするのであれば、無能極まりない政府があったとしても立て直すことが可能であり、国民はその点を明確に受け止め、自らの国のことを考え、行動すべきであると、最後に付け加えておきたい。