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【憂国の直言】 安倍氏を国葬で見送ろう   松木國俊(朝鮮近現代史研究所所長)

惜しい。あまりにも惜しい。日本国にとって最も大切な政治家を奪われてしまった。安倍氏こそが日本を正しい方向に導く希望の星だった。

思えば彼ほど左翼勢力から罵詈雑言を浴びせられた首相はいなかった。それこそが彼が大宰相であった証明なのだ。日本を立て直すことは並大抵の力量では不可能だ。揺るがぬ決意と信念を持ってあらゆる障害を打ち破らねばならない。それを成し得たのはおそらく戦後の首相経験者の中で安倍氏ただ一人ではないだろうか。

彼の死は韓国でも大きく報じられた。7月8日夜韓国のKBSニュースは安倍氏が死亡したニュースをトップで大々的に報道した。そこでは「A級戦犯が祀られた靖国神社に首相として参拝した人物」「歴史を歪曲して慰安婦強制連行を否定した人物」「軍国主義の極右政治家」「戦略物資輸出制限で韓国に経済戦争を仕掛けた張本人」等々安倍氏が日韓関係を破綻させた危険な人物であったことを強調していた。韓国のネット空間では安倍氏の死を報じるニュースに「いいね」をクリックしたものが「悲しい」の10倍以上に達した。

他国の首相経験者の死を無邪気に喜ぶ「民度」の問題はさておき、安倍氏はなぜこれほど韓国から嫌われたのだろうか。安倍氏が登場するまでの日本は、韓国が声を荒げればすぐに謝罪してお金を差し出して来た。河野洋平氏は慰安婦強制連行という「嘘」まで認めて韓国に頭を下げた。村山談話、菅談話で謝罪をくりかえし、閣僚や高官が「日本統治時代には日本もいいことをした」と本当のことをいえば、時の日本首相はあわててその首を切った。日本人としての矜持など欠片もない政治家たちが、自国の歴史を一方的に貶めることで隣国のご機嫌を取ってきたのだ。日本国民の「名誉」と「誇り」など全く省みられることはなかった。

しかしながら安倍氏は違った。韓国が事実を捻じ曲げて「嘘」の歴史を日本に押し付けてくるや、これを毅然と跳ねのけた。歴史の真実にもとづいて反論し、日本人の「名誉」と「誇り」を守ったのだ。「これまでとは勝手がちがう」と韓国側は焦ったに違いない。「嘘」が通らなくなってしまった。当然韓国では安倍バッシングが始まる。安倍氏の人形に火をつけるデモンストレーションが各地で行われた。一旦暴走したら止まらない国柄である。

そもそも外交交渉は押し合いであって譲り合いではない。相手から憎まれるほど押さなければ日本の国益を守ることはできない。外交に誠意など入り込む余地はないのだ。安倍氏がこれほど憎まれたのは韓国を相手に日本の国益を守り抜いた証左である。

さらに世界的視野から見ても安倍氏の力は傑出していた。日本憲政史上初めて国際政治の場でリーダーシップを取り、世界を動かした日本の宰相であった。彼が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」は今や自由主義陣営全体の戦略となった。彼が「反日野党」の抵抗に屈せずに成し遂げた「平和安保法制」は、ウクライナ戦争で力による現状変更へのハードルが下がった中で、東アジア地域全体の安定のためになくてはならないものとなった。

だからこそ安倍氏は日本のみならず世界の未来に大きく寄与した政治家として世界中から悼まれている。かつてそのような大政治家が日本にいただろうか。吉田茂氏は日米安保条約を締結して戦後の冷戦構造の中で日本の繁栄を築いた功労者だと称えられている。その功績で彼は戦後ただ一人元首相として「国葬」となっているのも事実だ。しかし彼はサンフランシスコ平和条約を調印し日本が独立を回復した時点で、米国から押し付けられた憲法を改正しなかったという大きな禍根を残した人物である。戦後の米国への従属体制に日本を組み込んだのも吉田氏だ。安倍氏はその従属体制から脱するために戦ったではないか。「戦後レジュームからの脱却」という大目標の下で、日本人が自信と誇りを取り戻すべく教育改革に力を注ぎ、日本の国柄に合わない押し付け憲法の改正に向かって大きな流れを作ったのも安倍氏である。その日本民族に対する貢献は吉田氏をはるかに凌ぐものがある。

残念ながら凶弾に倒れたがこれからは護国の星となって永遠に日本を守ってくれるだろう。ならば安倍氏への最大限の感謝の気持ちを込めて日本国民は彼を「国葬」で見送ろうではないか。

安倍さん本当にありがとう。あなたの志を継いで私たち日本人はきっと立派な国をつくります。                                  合掌