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北朝鮮の奇々怪々なコロナ感染者数報道   宮塚利雄(宮塚コリア研究所代表)

 北朝鮮は5月12日に開かれた朝鮮労働党の会議で、オミクロン変異株「BA.2」の感染者が発生したことを明らかにした金正恩朝鮮労働党総書記は、「最大非常防疫体制」への移行を宣言し、その後、「建国以来の大動乱」と位置付けた。北朝鮮は2020年1月下旬に中国からの新型コロナの流入を遮断するために国境封鎖を断行し、徹底した防疫体制をとり、「ゼロ コロナの国北朝鮮」を吹聴してきたが 、それがなぜ5月12日に「コロナ感染者発生」と明らかにしたのか。それでなくとも北朝鮮は今年3月31日までに6万4000人を対象にPCR検査を実施したが、「感染者はゼロ」と世界保健機関(WHО)に報告していた。北朝鮮では中国発の新型コロナ感染者が発生し、感染が世界を席巻するようになった当初から、コロナ感染者が発生していたことは固くないが、当初から当国でも新型コロナ感染者が発生しましたとは言わず(言えば国内のずさんな医療体制が発露する)、WHОには「感染者ゼロ」と報告し続けて来た。

それが5月12日に突如コロナ感染者発生を明らかにしたのは、「平壌で秘密に伏せておくのが難しい感染が広がったため」と言われているが、北朝鮮では地方で大型の伝染病などが発生したなどと言うことになれば、その事実を明らかにした医療機関や、その地域の労働党幹部は「平壌の党中央から叱責を受けるばかりでなく粛清されることもある」ので、事実通りに報告することは自らの災難を招くために、コロナ感染者が発生しても中央には「他の伝染病患者数として、それも少ない数で」報告していたからで、4月29日に中国との鉄道による貿易事業を中断すると発表したことにより、「コロナ清浄国北朝鮮」が実際にはコロナ感染者が発生していることを隠し切れなくなったのである。

問題は北朝鮮の保健当局が連日発表する新規「有熱者」(感染者)数の信ぴょう性である。5月12日基準で焼く1万8000人だったのが、13日には約17万人、14日に約30万人、15日に約39万人と急拡大したが、これを境に16日は逆に約27万人に減り、29日にはピーク時の4分の1水準である約10万人まで減った。しかも、5月26日現在の死亡者数は計69人、致死率はわずか0.002%とのこと。これは日本(0.35%)や韓国(0.13%)はもちろん、世界的に致死率が低い台湾の0.01%よりも圧倒的に少ない。感染者の増加と減少が短期間に怒り、かつ急減である。北朝鮮は国連機関や中国、韓国などからのワクチン提供を拒否し、劣悪な衛生環境や慢性的な栄養失調で免疫力が低い状況下でのこの数字である。「感染を正確に検査できる医療体制さえない北朝鮮の統計はデタラメに近い」と認識することが必要だ。統計の信ぴょう性を疑わざるを得ないし、それに加えて5月17日に世界保健機関のテドロス事務局長が「WHОが求める感染拡大に関するデータの提供に北朝鮮が応じていない」ことを明らかにし、「さらなる感染拡大を深く懸念していると」とした。さらに6月1日にはWHОで緊急事態対応を統括するマイク。ライアン氏は「良くなってはいない。悪くなっていると見なしている」とし、「必要なデータを得られないため、適切な分析を示すのは難しい」と付け加えた。

 北朝鮮のマスコミは「柳の葉を煎じて一日3回飲め」「咳が出たら蜂蜜を」「窓を開けて」とコロナ対処法を紹介し、「薬と塩水うがいで熱が下がった」とも報じているが、金正恩総書記は「中国の成果と経験から学ぶのが良い」と語り、圧倒的に不足している医薬品の支援を中国に求め、5月16日に北朝鮮の高麗航空に所属する輸送機3機が中国遼寧省。瀋陽の空港に到着。最大150トンの医療物資を積んで同日中に北朝鮮に戻ったが、北朝鮮はコロナ阻止のために2020年1月末から国境封鎖に着手し、海外との間で航空機を運航させるのは約2年3か月ぶりのことであった。北朝鮮では5月15日をピークに感染者数は減少しているが、これは金正恩総書記が5月14日に「苦しんでいる世帯に渡してほしいと自宅の常備薬供出」し、金正恩総書記の人民愛を込めた「愛の不死薬」を供給し始めた直後からだと、北朝鮮のマスコミは報じているが、どこまで真実なのか、公表される感染者数や死亡者の数を鵜吞みせず、疑って見るしかない。