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「万策尽きた後の最後の一手=ゴルディアスの結び目を斬る」 西村眞悟

 二月一日に、石原慎太郎さんがご自宅で亡くなった。「敗戦後という時代」の生みだす諸状況と格闘を続けた八十九年の御生涯だった。而して、生きている我らは、日本国家と民族の為に、石原慎太郎さんが実施された格闘を続けなければならない。

そこで、まず、言葉によって生きる作家として人生を歩み出された石原慎太郎さんが遺された、現在の我らが対面すべき一つの「言葉の碑(いしぶみ)」を本誌において指摘したい。

 その「碑(いしぶみ)」は、東京都議会議員の土屋たかゆき氏が、平成二十四年六月十三日の東京都議会本会議において、石原慎太郎東京都知事に対して、次の通り発せられた文字通り現在日本における歴史的な質問に対する石原都知事の歴史的答弁である。

「石原都知事の憲法についての基本的なご認識は、日本国憲法は憲法として認めがたく、第九十六条の改正規定によらず、無効宣言をして排除できるというご見解であると拝察しますが・・・石原知事の憲法無効宣言、領土と国を守る権利と憲法の条項に関してご見解をお伺いいたします。」

 ここで、次ぎに、石原都知事の都議会における土屋たかゆき議員に対する答弁を記す前に、現在の我が国の「国家の存立」と、国民の生命則ち「国民の運命」が、「日本国憲法と題する文書」を「日本の憲法」だと思い込んでいる戦後政治によって、如何に危機に瀕しているか、具体的に直視しなければならない。これを直視しなければ、石原慎太郎さんが、発した言葉が「碑」であるとこを理解できないからだ。そして、理解できたならば、直ちに「抜本塞源」つまり「過ちの根本を抜き、過ちの源を塞ぐ」実践に着手しなければならない。

それは、「日本国憲法の無効確認と廃棄」、同時に、「神武天皇創業以来の我が国の歴史と伝統のなかにある我が国の不文の憲法の確認」である。

さて、何故、北朝鮮は、数百名の日本国民を密かに拉致して連れ去ることができるのか?何故、北朝鮮は、国境を接する中共やロシアや韓国の上空にミサイルを飛ばさないのに、日本の上空だけミサイルを飛ばすのか?尖閣諸島は日本固有の領土であるところ、中共は現在、日常的に軍艦を尖閣周辺の我が領海に侵入させて「ここは中共の海である」と嘯いている。何故、我が国はこの中共の行動を排除しないのか?日本国政府とマスコミは、我が領海に侵入している中共の船を「公船」と呼んでいるが、これは誤魔化しの詐称だ。あの船は中共海軍の軍艦である。この状態を放置すれば、いずれ尖閣諸島は中共に奪われ、尖閣の南西指呼の間にある台湾と北東百七十キロにある沖縄本島は中共の掌中に入り、日本本土へのシーレーンが中共に扼されて、我が国家全体が存続の危機に瀕する。

以上の危機は、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して我らの安全と生存を保持しようと決意した」という日本国憲法前文と、武力の行使と交戦権を放棄した九条によってもたらされている。つまり、憲法九条が北朝鮮のミサイルを日本上空に誘い呼び寄せているのだ。

さらに日本国の国土は外国人によって自由に買い占められている。国境の島や国家防衛の重要施設周辺を中国人に買い占められる危機を防ぐ為に外国人土地取得制限措置を講じる必要があると主張すると、日本国政府は憲法二十九条に「財産権はこれを侵してはならない」との定めがあるので之はできないと答弁して、我が国土を主に中共による自由な買収に委ねている。

小学校児童に国旗「日章旗」に正対して国歌「君が代」を歌わせた校長が、小学生の前で土下座して謝ったことがあった。何故なら、校長の行為は、憲法十九条の思想及び良心の自由を侵しているからだという。これでは、幼少の子供達に対する教育ができないではないか。

以上の通り、我が国の安全保障と国民の安全と教育という内外の分野における危機は日本国憲法によってもたらされている。日本政府のように、北朝鮮に拉致された人々の救出を口先では願いながら、簡単に拉致される状態を放置することは、北朝鮮の日本人拉致に対する不作為の幇助である。

この状況を阻止するためと称して、口先だけで「憲法改正」を唱えるのが現下の風潮である。しかし、この日本国憲法を書いた占領軍GHQが、「改正できない改正規定」を書いて残していったことが解らんのか。口で改正を唱えながら、結果において現状を放置するのは不作為による任務放棄に等しい。改憲反対を唱える馬鹿よりたちが悪い。

そう、安倍内閣の如く、「改正できない改正規定による改正」を唱えて長期政権を続けることは、一種の政権の詐欺・国民への裏切りである。安倍内閣が曰くの、自衛隊を、こともあろうに「陸海空軍はこれを保持しない、交戦権はこれを認めない」と明記している憲法九条に書き加えるという改正案とは何事か!?そんな「改正」などしてはならない。自衛隊は平安朝の武士集団が「令外の官」と言われながら歴史を動かしたように、現在の「令外の官」として扱われたほうがましだ。

そこで、この状況を一挙に打開する為の方策として、難しい課題を、発想を変えて一挙に解決する為の古代から伝えられた伝承を紹介した上で、土屋たかゆき都議会議員の質問に対する石原慎太郎都知事の答弁を記すことにする。それは「ゴルディアスの結び目を斬る」(to cut the Gordian Knot)ということだ。

現在のトルコ中部だと言われている古代アナトリアのフギリアという国の王ゴルディアスが、神殿の柱に丈夫なヒモで荷車をしっかりと結びつけ、「この結び目を解くことができた者は、アジアの王となる」と予言した。すると、その予言を聞きつけた男達が各地からやってきて、結び目を解こうとしたが、遂に誰も解くことが出来なかった。そして、数百年が経った時、アジア遠征の為にギリシャのマケドニアの王であるアレキサンドロスがフギリアに来て、ゴルディアスの結び目を「解く」のではなく、一挙に「切断」した。そして、アレキサンドロスは東に向かい、アジアを征服した。

次ぎに記す石原慎太郎都知事の答弁は、分かり易い言葉で語られているが、考え抜かれた結論であり、見事に「ゴルディアスの結び目を斬った」もので「言葉の碑」と言えよう。トルストイが、「偉大な結果をもたらす思想とは、常に単純なものである」と言った通りだ。

我らも共に結び目を斬りすて、一挙に「日本国憲法無効の宣言による廃棄」を実施して厳しさを増す内外の状況を克服し、日本国民としての使命を果たさねばならない。

なお、この石原都知事の「言葉の碑」は、本誌「やまと新聞」にこそ、掲載されるに相応しい。何故なら、石原氏のこの答弁を引き出す質問をした土屋たかゆき都議会議員は、巡り合わせの妙によって、現在、「やまと新聞」の編集長であるからだ。

 

石原慎太郎知事の答弁

「土屋たかゆき議員の一般質問にお答えいたします。

まず、憲法についてでありますが、現日本の憲法なる怪しげな法律体系の非常に矛盾に満ちたといいますか、ゆがんだ成立の過程に対するあなたのご指摘は全く正しいと思います。それを証明する資料はたくさんあります。大事なことは、私たちがどういう形で降伏したかということを思い返す必要がある。

・・・この憲法というものは間違った点、汚点、マイナスなんていうのはたくさんありますが、これを改正する必要はないんです。改正なんか唱えているから時間がかかるんだ。

これはしっかりした政権ができれば、その最高責任者が、とにかく国民の一番の代表として、この憲法は認められないと、歴史に例がないと。ゆえに、私たちはこれを要するに捨てる、廃棄する。

廃棄という言葉が強いんだったら、どうもそぐわないカップルが、このままいくと決して幸せになれないから、私はこの女性と別れます、私はこの男と別れます・・・この憲法から別れたらいいんですよ。その判断をすればよろしい。国民はそれを必ず是とするでしょう。」