araki「拉致問題の闇を切る」

【拉致問題の闇を切る】 ミサイル列車の怪 荒木和博(特定失踪者調査会代表)

 9月16日、北朝鮮の労働党機関紙「労働新聞」は「朴正天書記 鉄道機動ミサイル連隊の検閲射撃訓練指導」という記事を掲載しました。この記事には列車からミサイルが発車される写真が掲載されているのですが、同時に空撮まで駆使した動画でミサイル発射の場面を世界中に配信しました。何度もテレビで流れたのでご覧になった方も多いでしょう。

 

 テレビのコメンテーターは「これ移動して発射できるようになり脅威が増大した」と言っていた人もいました。しかしそうでしょうか。私にはあの画面を何度も見直しながら「?」が次々と増えていきました。

 

1、そもそもミサイル発射には極めて大きなエネルギーがかかる上に、発車するときの熱などで積載する車両も線路も激しく損傷するはずです。いわんや箱の中に並べた2発は仮に1発撃てたとしても、そのときの熱や衝撃でもう1発が無事に発車できるとは思えません。もしやるなら1両1発が常識でしょう。

 ちなみに昔ドイツなどで「列車砲」というのがありました。大砲を列車に積むものなのでミサイルとは異なりますが、どんな車両だったか、ネットで検索してみると出てきます。これと比べてみると不自然であることは素人でも分かります。旧ソ連の時代列車に弾道ミサイルを載せたRT-23というのがありました。今回のミサイルは装輪車の発射台から撃ち出すロシアのイスカンデルのコピーのようですがジャーナリストの篠原常一郎さんによればロシアでもこれを列車に載せたものを試作したそうです。結局実用にはならなかったようですが。

 

2、ミサイルを積載していた貨車の台車は普通の台車でした。これでミサイル発射の衝撃に耐えられるとは思えません。北朝鮮には「百トン貨車」という金日成時代に思いつきで作った、文字通り「無用の長物」があるのですが、これが使われたわけでもありません。ミサイル発射のとき立ち上げた側の台車の、しかも2本並べているのですから衝撃は特に片側の車輪2輪に集中して掛かるわけで、まともに撃ったなら車両が脱線しない方がおかしいと思います。写真を見ると地面に支えは設置しているようですが、どうみても頼りない、お飾りのような感じです。線路もどんなに整備していたとしても、見た感じは普通の砂利を敷いた道床の上にコンクリート枕木を置いて、それに普通のレールを敷いた、要は普通の線路です。

 

3、もともと弾道ミサイルは地下の発射施設から撃つ場合でも最初から点火して撃つと1発でその施設は使えなくなるそうです。そうしないためには一旦圧縮空気で打ち上げて、それから点火するやり方が使われます。今回のミサイルは最初から火が付いていますから、まあ通常考えれば車両も線路もめちゃめちゃになっているでしょう。山火事が起きているかも知れません。周囲が何でもないということならばフェイクでしょう。

 

4、画面には架線柱らしきものが見えます。とすると電化区間で架線を外して発射したということでしょうが(機関車はディーゼル機関車なので)、これまたえらい無駄です。非電化区間もいくらでもあるのに。しかも本当にやったのなら架線も架線柱も吹き飛んで復旧するのに大変な労力が要ります。

 

 全部がフェイクとまで断定はできませんが、北朝鮮が空中からの映像やあちこちからとった映像を公に発表したということは、逆に言えば少なくとも額面通りではないということです。あれをもって脅威が高まったと心配する必要はないと思います。しかもあんなことをやるためにまた相当な資源の無駄遣いをして、人民軍の一般部隊はさらに戦闘能力が低下しているでしょう。ミサイルだけで戦争はできません。

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