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未来を背負う子供たちに健全な教育の提供を ―令和3年6月定例議会一般質問― 浜田 茂久(南九州市市議会議員)

長引く新型コロナウイルスの拡大に伴い、さらに多くの犠牲になられた方々に対し、心よりお見舞いを申し上げますとともに従事される医療関係者に加え、感染撲滅の切り札になるとされるワクチン接種にかかわられております関係者の皆様方の献身的ご努力に敬意を表したいと存じます。

さて本日は、先に通告しておりました教育問題に対し、次の二点からの質問を致します。

1、未来を背負う子供たちに健全な教育の提供を

2、未来に希望を描くことのできる子供たちを育てる平和教育をということで、2につきましては一年前の定例議会でも同様な質問を致しましたが、その後一年たった現在の状況はいかがなものかということを含め新たな質問でございます。                                                                                                           

現在使用されている歴史教科書の中に、その真実が不確かな記事、また、不均等な取り扱いをされた記事等が使用されたものがございます。昨今、学者間においても、記事の取り扱いについて慎重であれ、そして教科書検定における基準の読み取りを厳重にとの提唱がなされる機会が多くあるようでございます。

本年度から使用されている令和2年3月24日文部科学省検定済の「中学歴史日本と世界」においては『第二次世界大戦と日本』の項目に、次のような記事がございます。

「中国や朝鮮の人々を戦時体制に組み込むための「皇民化」政策が推進され、日本語の使用や神社参拝が強制された。特に朝鮮では氏名を日本式に改めさせる創氏改名が行われた。多くの朝鮮人や中国人が日本に徴用され、鉱山や工場などで過酷な条件のもとでの労働を強いられた。」そして文章の最後に➀(まる1)と記され、さらに「また、朝鮮や台湾でも徴兵令が施行された。と読き、欄外に➀の注釈として「戦地に設けられた「慰安施設」には、朝鮮、中国、フィリピンなどの女性が集められた(いわゆる従軍慰安婦)」との文章が添えられております。検定基準「構成・配列」の項(十三)図書の内容のうち、説明文、注、資料などは、主たる記述と適切に関連付けて扱われていること。とありますが、筆者独自の意図的取り扱いであり、無理くりの記述を検定の目をすり抜けるように記載するという姑息なやり口としか私には感じられてなりません。本文のたった五行の中に詰め込まれたすべての繊細な問題に対し、丁寧さを欠く記事にまずは驚くばかりでございます。

戦時下に起こった数々の非人道的行為として何の説明もなく批判するかのような羅列表記と注釈での慰安婦問題の取り扱いは、無責任極まるものと私は考えます。歴史教科書もつ使命は、いかに「過去の歴史を直視し、正しくこれを理解すること」を学ばされるものであり、自虐的な表現は厳に慎まなければなりません。教科書の筆者には、誤解が生じかねない用語の使用を避ける責任があることをしっかり認識してもらいたいと感じる次第です。

未来を背負う子供たちに戦争が故に互いに起こした非人道的行為に対し、敗戦国となった我が国が一方的にその責任を追及されるかのような不均等な教科書記事は、その学習に決して有益なものではございません。歴史教科書といえども、子供たちの心を閉ざすような表現、記事の扱い方は回避しなければなりません。

教科書は児童生徒の心身の健康や安全及び健全な情操の育成について十分な配慮と丁寧な対応が求められるものでございます。

  このことにつきましては、先の3月、本市教育委員会が発行者となり、校長会編集による「夢ひろがる」と題した小冊子がございます。新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、普段の生活に多くの制限を受け、外での活動もままならぬ昨今、このような時こそ良い本をたくさん読んでほしいとの思いから、市内の校長先生方が意見を出し合いながら選抜した「家族や友人を大切にする心を耕す本」とし、いくつかの本の紹介がなされております。実に素晴らしい取り組みであると感じております。

子供たちの心の声を聴く、そして教育者としての温かい心をもって子供たちに寄り添う、そのような思いがじかに伝わってくる冊子となっています。これこそが丁寧な教育の実践であると感じております。

  私は過去の出来事に必要以上にとらわれ、卑屈になって次の一歩が踏み出せない環境が子供たちの意識にまで持ち込まれることは、子供たちの自由な発想、想像力を妨げる一因になるのではとも心配する次第です。戦後七六年、子供達には未来志向型の教育を提供することが何よりも重要だと考えます。

ただいま指摘させていただきました丁寧さを欠く教科書の問題、そして教育委員会を中心にまとめられた冊子への思い等を市長、教育長より感想を含め発言をお願いします。

 

次に、子供たちの健全育成を促す平和教育の実現についてお伺いします。

昨年に引き続き、今年の「知覧特攻慰霊祭」は、新型コロナの感染拡大防止のため式典を中止、規模を縮小して挙行されたところでございますが、市長もご心配の通り、特攻を直接知る世代も少なく、コロナ禍で平和記念公園の訪問客も減少、さらに、戦争の悲惨さを語り継ぐ機会も少なくなり、戦争に対する記憶が風化されていくという危惧がございます。

私は丁度1年前の定例議会においても、そのような懸念から、記憶の風化を避けるうえで永久保存の「世界記憶遺産」への登録の重要性を議題に上げさせていただきました。

2015年、最初の申請依頼、その登録に向かっての進展はあるのでしょうか。日本ユネスコ国内委員会からの見通しなどの確認はできているのでしょうか?

国連教育科学文化機関(ユネスコ)の執行委員会では世界記憶遺産の審査で、関係国間で見解が異なる資料の申請を念頭に、加盟国による異議申し立てを認め、関係国が期限を設けずに対話を続けるとする制度改革案が本年4月に承認されているようでございます。そのことでクレームがつくのではないかとの危惧により進まないようであれば、申請中の資料の活かし方についての工夫が求められるのではないかとも感じております。

先に紹介しました「読書の勧め」となっている小冊子の発行は、過去の反省からくる未来志向の教育を実践するものであると考えます。これに加え、本市ならではの平和教育の必要性を今一度、提案します。

平和教育は過去の戦争を反省し、平和的手段による平和の構築を目指す教育であると同時に、他人に対する優しさ、思いやり、いたわりといった平和の心を涵養する教育でございます。

平和研究とそれを基とした教育は戦争やテロなどの「直接的暴カ」だけでなく、圧制・貧困・疾病などの「構造的暴力」からも解放された、真に平和な国際社会の建設をめざす新たな学術的・教育的な試みとして注目され、発展してきているようでございます。

現代世界は、科学と科学技術の進歩発展にもかかわらず、核兵器、環境汚染、人口爆発、貧困などによって永続的繁栄を阻まれ、存続の危機すら瀕しているなか、人類生き残りのための学問となっております。鹿児島でも、鹿児島大学、鹿児島国際大学においても、すでに開講されており、本市が率先して、それらと連携し、資料の活用を考えてはいかがでしょうか。その過程に、小中学生への出前授業などを組み込みことで現代に生きる資料となりえるのではないかと考えます。

文化財課長に登録に当たっての進捗状況と何らかの追加要望が出ているのか、さらに市長には登録に対する意気込みと今に活かすための考えについて質問します。

最後に

今、日韓関係は冷え切った状態にあるようでございます。韓国の元慰安婦と遺族合わせて二十人が日本政府に損害賠償を求めた裁判で、ソウルの中央地方裁判所は、原告の訴えを退けました。日本政府に賠償を命じた今年一月の栽判とは異なり、国際法上の「主権免除」の原則が適用されると判断したほか、慰安婦問題の解決について「外交交渉を含む韓国の内外での努力によって達成されなければならない」としました。両国の融和に向けた新たな一歩ではあると考えますが、韓国がこの判断を将来にわたり遵守することとなるかは幾度となく約束が覆されてきたことから鑑みますと信頼しづらいところでございますが、それらの出来事に対し、今は敏感に反応することなく冷静に見守ることが大切であると考えます。

日本と韓国は最も近い隣国であり、両国民は友入として協力し合い、平和のうちに共生する関係の構築を追求すべきと考えます。両国の間で対立や葛藤が起きても、冷静かつ合理的な対話によって解決することが重要でございます。戦時下における諸問題については和解のプロセスという視点から「胸に納める」ことも必要ではないかと感じます。融和を図る取り組みが、そして、丁寧な教育が未来を背負う子供たちの育成が、環境問題、貧困問題を含めた平和の実現に他ならないと考えております。

 

以上を持ちまして私の第一回目の質問を終わります。あとは自席よりと行います。