yukoku「憂国の風」

学徒出陣とその戦後史(第1回)    玉川博己(三島由紀夫研究会代表幹事)

 今年は戦後76年の年であり、また昭和18年の学徒出陣から78年目に当る。日本人にとってもはや戦争ははるか彼方の遠い昔の出来事となっている。戦後まれの筆者はもちろん戦争体験は何もないが、24年前に他界した私の父が正にこの学徒出陣組であった関係で、生前の父からよく戦争の話を聞かされたものである。その意味で私にとって父(そして母の)戦争体験はある意味で幼少の頃から身近な存在であった。戦争で父母や祖父母が如何に苦労したのか、そして戦後の苦難の状況の中で父母達が懸命に生活を支え、子供を育ててきたことが我が家のルーツでもあったと子供の頃から感じていたように思う。これはまた私達の世代には共通した体験であるかも知れない。

 ここに今から数年前に啓文社書房から刊行された『学徒出陣とその戦後史』という本がある。 本書は学徒出陣体験を持つ7名の方々のインタビューをもとに構成されている。いわゆる戦記もの、戦争体験ものはこれまで実に多くの書物が出版されてきているが、本書は単にそうした学徒出陣体験者の戦争経験にとどまらず、それぞれが戦前はどのような学生生活を過ごしてきたのか、また戦争が終わって復員後、戦後の社会の混乱の中に放り出された若者達がどうやって生活し、家庭を営んできたのか、いわば戦後復興において各自がどのように社会の中で奮闘してきたのかを貴重な証言によってまとめている。言い換えれば本書から戦後復興史の一面が垣間見ることができるのではないだろうか。

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