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【なるほど納得政経塾】-60- 「経験の功罪」     小山和伸(神奈川大学経済学部教授経済学博士)

飛行機事故は離陸前に起きている

 出航前の船からネズミが一匹もいなくなるようなら、その船は沈没するに違いないと、帆船時代の昔に動物の不可思議な予知能力が、まことしやかに吹聴された巷談俗説を真に受けるわけではないが、自らも航空パイロットとして長年の経験を持つジョン・ローリーの分析(A Pilot’s Accident Review 2015)によれば、航空機事故の多くは、パイロットの経験と経歴、機体関連の整備状況などによって、離陸前に既に起きているも同然なのだという。

 ローリーは、飛行機事故の約八割がパイロットによる人為的なミスによるものであると指摘し、しかも事故率の高いパイロットの年齢が、熟練度も上がった男盛りの40歳代から50歳代に集中しており、事故発生に占める割合が51%に達しているデータを挙げている。彼が、事故に直結するパイロットのミスとして挙げているのは、質と量における訓練不足、自信過剰、点検不足、無理な飛行、自己顕示欲、である。勿論、経験を積んだ壮年期のパイロットは、夜間の離発着を含む長距離航路を担当する機会が増え、それだれ悪天候への遭遇も多くなることも、その大きな一因であることは間違いない。

 ただ、ローリーが熟練による自信過剰を、事故原因として繰り返し指摘している点は注目に値しよう。先ず、ローリーは経験の量は飛行時間で測れるかもしれないが、ある特殊な状況下での飛行、例えば双発機の一方のエンジンが停止したままで、何時間も飛行しなければならない状況とか、計器故障のもとで有視界飛行の困難な天候での飛行などの、質的な飛行訓練は評価しにくいと述べている。

 また逆に、かつて夜間の着陸経験が何回かある空港での事故について、過去の経験が気流の見込み違いや、雲と山の誤認などの初歩的なミスを生じやすい落とし穴についても、警鐘を鳴らす。

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