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【なるほど納得政経塾】-59- 「悪魔の解法」     小山和伸(神奈川大学経済学部教授 経済学博士)

限定された合理性と試行錯誤

 昔子供の頃に、「猿の手」という恐怖映画のショートストーリーを見たことがある。毛の付いた前腕から先の、ミイラ状になった猿の手を両手でつかんで願い事を唱えると、しばらくしてその手がブルブルと震えだす。恐怖心に堪えて、放さずにつかみ続けると願いが叶うのだった。

 ある時、生まれつき足の不自由な、たった一人の可愛い孫のために、根治手術に必要な費用の工面に奔走する老人が、不思議な呪術師に出会う。老人は呪術師から猿の手を借り受け、早速自宅で数万ドルの資金獲得を懇願する。数週間後、その老人の元に交通事故で亡くなった孫の死亡保険金が振り込まれる。

 老人は激しい怒りと後悔のうちに、猿の手を翌日呪術師に返そうと決心し、それを机の引出しにしまう。夜中に、隣に寝ているはずの妻がいないことに気づき、階下に降りてみると、老婆は猿の手を握り締めて、孫が生き返るように懇願しているのだった。老人は慌ててそれを取り上げ、暖炉の火にくべてしまうところで、このストーリーは終わる。

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