seikei「なるほど、なっとく政経塾」

なるほど納得政経塾-56号- 「検証『女工哀史』」    小山和伸(神奈川大学経済学部教授 経済学博士)

大正14(1925)年に初版が出版された、細井和喜蔵による同著は異常なほどの売れ行きを示し、戦後にも復刻本が版を重ねてきた。著者は、同著の中の至る所で会社側の経営管理や施策を、ことごとく徹底的に批判し、資本主義打倒の怨念を燃やしている。しかしながら、その記述を客観的に観ると、明治・大正期の我が国紡織工場において、かなり充実した福利厚生制度が実施されていたことがわかる。

同著の随所に、管理者側の暴行や虐待・酷使で殺された男女工達が何百人もいたという話など、到底事実とは信じられない記述が散見されるが、以下では自己矛盾にも陥っているこうしたアジテーション的な記述を除いて、勿論それは筆者の意図には反するであろうが、客観的な経営管理内容の記録に従って、当時の労働環境と企業の管理意識を検証してみよう。

先ず著者は、男女工員の募集と工場管理の状況について、以下のような三期に分けて記述している。第一期は、明治10(1878)年頃から日清戦争[明治27(1894)年~28(1895)年]頃までの時期であり、第二期は日清戦争から日露戦争[明治37(1904)年~38(1905)年]頃まで、第三期は大正時代以降(1912年~)の時期とされている。

第一期は没落士族の子弟を中心とした男女工員で、募集は容易だったという。また、工員達が誇りを持って仕事のできる良い時代だったとされる。まだ「強制送金制度」や「年期制度」もない、おおらかな管理であったとされる。

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