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「徴用工問題」日本は一ミリも譲ってはならない 松木國俊(朝鮮近現代史研究所 所長)

コロナ騒ぎの陰で、いわゆる「徴用工裁判」で韓国側に差し押さえられた日本企業の資産が売却されようとしている。日本政府が再三「韓国政府の責任で解決せよ」と促しても、文在寅政権は「司法の決定を尊重する」と他人事のような回答を繰り返すばかりだ。

立て続けの失政によって文大統領は八方塞がりに陥っている。最低賃金を二年間で29%引き上げたために、たまりかねた自営業者が人減らしに走り、若年失業率は実質25%に達した。頼みの輸出も昨年1~9月は前年同期比8.6%減少し、回復の見込みはない。その一方でマンションなど不動産価格は3年間で30~50%上昇し、バブル崩壊が目の前に迫ってきた。加えてコロナウイルス拡大で社会的混乱が拡大し、あれほど恋い慕った北朝鮮からは見捨てられ、本年初頭の時点で文大統領の支持率は就任以来最低の34%まで低下した。

今や文大統領に残された道は、国民の反日感情に訴える以外になく、日本から金をむしり取って民心を繋ぎ止めようとするだろう。

日本は歴史問題を持ち出せば何でも言うことを聞いてきた。今回は「日韓が未来志向の関係を築くために、徴用工問題をめぐって共に知恵をだそう」と日本に持ち掛ければよい。すると日本のテレビ番組では軽薄なコメンテーター連中が、良識派を気取って韓国を擁護し、左翼の大手マスコミも韓国を代弁してくれるだろう。たちまち日本の世論は韓国寄りになり、日本政府は折れてくるはずだ。文在寅はそのように踏んでいるに違いない。

しかし徴用工問題は外交的にも韓国国内でも完全に解決した問題である。ここで日本が新たな交渉に応じれば、その瞬間に「補償問題は解決済み」という日本の立場は崩壊する。そして韓国の最高裁が下した「不法な植民地支配に対する慰謝料を払え」という判決が生きてくるのだ。

日本統治が「不法な植民地支配」であれば、日本統治時代の日本人によるあらゆる行為が訴訟の対象となるだろう。大戦末期に行われた徴兵も強制連行であり、朝鮮総督府が朝鮮人から徴収した税金も不当な収奪となる。「創氏改名」で名前を奪われ、民族のプライドを傷つけられた、朝鮮語を奪い日本語を強要された等々、韓国が勝手に歪曲した歴史観に基づいて、「被害者とその遺族」は補償金や慰謝料をいくらでも請求できることになる。その額は天文学的数字となり、日本は永久に韓国の「金づる」になるのだ。それこそが文在寅政権の最終的狙いではないか。文在寅政権の狡猾な魔手から日本を守り、誇りある国を子々孫々に残すために、すでに解決済みである「徴用工問題」で日本は韓国に一ミリも譲ってはならない。