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【とおる雑言】 〝金正男殺し〟を命じた人は? 寺井 融(アジア母子福祉協会監事)

ドキュメンタリー映画「わたしは金正男(キム・ジョンナム)を殺していない」(ライアン・ホワイト監督)を観られたであろうか。もし、これから観に行かれるのであれば、同映画パンフレットの購入もお薦めする。映画の制作過程や北朝鮮の権力抗争、そして「映画化された20世紀以降の世界の主な暗殺事件」まで網羅されている。

金暗殺事件は二〇一七年二月十三日、マレーシアのクアラルンプール国際空港で起こった。逮捕されたのはシティ・アイシャ(インドネシア人)とドアン・ティ・フアン(ベトナム人)。二十代後半の女性たちである。残された監視カメラの映像からみて実行役は彼女らだとして、計画を立て、実行までをサポートし、指示していたのは誰か。

それは言うまでもなく、北朝鮮の謀略機関であり、突き詰めていけば北朝鮮の最高指導者、金正恩(キム・ジョンウン)その人である。異母弟が異母兄を殺したのだ。

本作は、その本家本元を問わずして、末端に懲罰を加えてよいのか、と問うている。

幸いにして、二人は裁判途中で釈放され、本国送還となった。インドネシア、ベトナム両国政府が、強く働きかけたからである。

北朝鮮は、同国内にいたマレーシア人を〝人質〟にして、マレーシアから容疑者の帰還をかちとっている。想い起こせば二〇〇一年五月一日、金正男とおぼしき人物が旅券法違反容疑で成田空港において拘束した際、すぐに釈放せず、北に拉致されているわが同胞の交換を要求すればよかったのだ。