ken「筆は剣よりも危うし」

【筆は剣よりも危うし】 [無理でも無駄ではない] 三澤浩一(武客)

「無理でも無駄ではない」。このところ、この言葉を繰り返し、繰り返し、つぶやいている。前にも述べたことがあるが、非常に素晴らしい言葉だと思う。

 僕は時代小説というのか、江戸時代を舞台にしている作品が好きだ。郡順史先生と杉田幸三先生からは親しく教えをいただいたので、僕ごときが好き云々と述べる立場にはない。長谷川伸さんを別格とすれば、池波正太郎さんを筆頭に、司馬遼太郎さん、藤沢周平さん、山本周五郎さん、吉川英治さんたちを愛読している。

 虎狼難(ころな)のせいで、自宅にいる時間が増え、読書時間が増えたのだけはありがたい。このところ小説では、上田秀人さんの「水城聡四郎シリーズ」にハマっている。江戸幕府の6代将軍から8代将軍の時代、愚直な旗本の活躍を描いている作品だ。今までに勘定吟味役(全6巻)、御広敷用人(全11巻)、道中奉行副役(全6巻)とシリーズ化されており、年明けには新しいシリーズがはじまるだろうと楽しみにしている。

 これらの作品で、主人公の主君である徳川吉宗が幕府の再建を目指し、悪戦苦闘している姿が描かれている。徳川家康の時代のような幕府を再建しようと、吉宗は奮励努力する。そんな中、京都の豪商が吉宗の努力を「無理でも無駄ではない」云々と、主人公に語る場面がある。

 「無理でも無駄ではない」。この言葉から「ある目標に向かって奮励努力しても、その目的を実現させるのは無理でも、努力していることは無駄にはならない」と、僕は教えられた。「無理なことを目指した人生であっても、無駄な人生ではない!」と励ましてもらった気がした。

 作家たちが作品の中で、登場人物たちに語らせた言葉には教えられることが多い。主人公だけではなく、脇役、ときには悪役や敵役からもだ。これは小説だけではなく、映画などにもある。もちろん僕なりの解釈だから、誤解もあるかも知れないが、本当に教えられることばかりといえる。

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