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【なるほど納得政経塾】-51号- 「疫病社会科学Ⅱ」 小山和伸(神奈川大学経済学部教授 経済学博士)

農牧文明が遅れたアボリジニとインディオ

前回「疫病社会科学Ⅰ」で説明したように、早くから人類が狩猟採集生活を営んだアフリカやアジア・ヨーロッパ地域では野生動物が減少していた。この獲物不足のために、アジア・ヨーロッパ地域では、農耕牧畜生活への変革を余儀なくされたと考えられる。これに対して、まだ野生動物が豊富な地域(オーストラリアや南北アメリカ大陸)に比較的新しく移動した人類は、狩猟採集生活を維持できた。アフリカ大陸では、家畜化可能な従順で食用に適した動物種が少なかったこと、また沙漠や害虫によって耕作が困難だったため、やはり農耕牧畜生活への変革は難しかった。

紀元前4万年から1万年頃に、オーストラリアや南北アメリカ大陸に移動した人類は、既に狩猟の技能をかなり高めていたのに対し、現地の動物は人間への警戒心をまるで持っていなかったと考えられる。故に、多くの動物種が一万年未満に絶滅していったが、とにかくしばらくは農牧畜の必要が無いほど豊富な獲物に恵まれた時代が続く。

農牧畜が未発達な社会では、食糧の安定供給が難しく、人口の稠密化と職業の専門化による生産性の向上、階級制度の発達とそれに基づく大集団の統率、そして家畜由来の疫病への感染と抗体の発達に遅れを来した。

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