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保守系教科書を絶滅させた安倍政権の重大な犯罪的行為 藤岡信勝(新しい歴史教科書をつくる会副会長)

 本日(8月4日)、横浜市教育委員会は来年度から使用する中学校の教科書を採択し、社会科の歴史と公民の教科書では、今までの育鵬社の教科書を不採択とし、歴史は帝国書院、公民は東京書籍を選んだ。

 神奈川新聞(8月4日15:16発信)によれば、同日の定例会で、鯉渕信也教育長と5人の教育委員が無記名投票をして決めた。「市教委は、歴史認識を巡り、賛否の分かれる育鵬社版を11、15、19年の3回連続で採択してきた。横浜と同様に、同社[育鵬社]版を3回連続で採択してきた藤沢市教委も先月31日、不採択とした」と同紙は報じている。

 これは、2014年度の教科書検定で新規参入の「学び舎」を検定に合格させ、2016年度に「一発不合格」制度をつくり、2019年度の検定でその制度を適用しつつ「不正検定」によって「つくる会」が推進する自由社を抹殺した一連の「左翼主導」の教育行政の流れの総仕上げとして位置づけられる。これによって、1996年からスタートした教科書改善運動は、24年目にほぼ終焉を迎えることになったといえる。

 なぜなら、自由社の歴史教科書はすでに採択の市場には存在せず、最大の販売先であった横浜市(全国で最大の採択区)を失った育鵬社は、教科書から撤退することは確実だからである。なぜなら、育鵬社は一般の営利会社ベースで教科書を発行しており、大幅な赤字の見込まれる事業を継続できない道理である。

 ただ、自由社は例外である。自由社と「つくる会」だけは、この「左翼・媚中政権」の弾圧のもとでも、孤塁を守るであろう。日本を愛し、日本の誇りある歴史を次代に伝えようとする日本人は多分絶滅しないであろうから。

 また、自由社の教科書は歴史、公民とも、執筆者には1円の印税も執筆料も支払っていない。私を含めて、すべて完全に無給である。また、多くの方々の寄付金に支えられている。だから、自由社は普通の商業ベースの教科書会社とは存立の原理を異にするのである。育鵬社(の教科書部門)は潰れても、自由社は潰れないのはそういうわけだ。

 自由社の歴史教科書は、現在、検定に再申請中である。これを必ず合格させなければならない。自由社の歴史教科書は、採択されなくても、存在することに意味があるのである。詳しくはいずれ機会を改めて述べる。

 それにしても、このような事態になったのは、返す返すも無念である。慰安婦問題についての問題意識を共有する議員グループに発祥の起源をもつ安倍政権が、この度は文科官僚のクーデターになすすべもなく屈服し、あまつさえ、文科大臣の保身に協力して産経新聞社発行の雑誌正論編集部までが、過去数十年の同誌を支えた諸先輩の営々たる努力を踏みにじり、目先のチマチマとした利権や利益に目が眩んで、文科官僚のデマをそのまま編集部論文とする失態を演じ、「つくる会」を公然と裏切るにいたった。この罪は許しがたい。

 育鵬社はかねてから、営業マンが採択現場で「極右の自由社」とわが社は違う、ということをセールス・ポイントに採択を稼いできたことはよく知られている。いっそのこと、自由社をなくせば、もっと「左寄り」の教科書を堂々とつくり、もっと採択が取れると夢想したはずだが、残念ながら世の中はそういう仕組みにはなっていない。「人を呪わば穴二つ」で、つくる会が無くなれば、育鵬社もこのように抹殺されるのである。

 逆に言えば、自由社の存在が育鵬社の採択を支えていたとも言えるのである。保守陣営内のセクト的な派閥意識は、いかに犯罪的な間違いであるか、安倍政権の保身と、それに迎合する「保守派」の空気がいかに罪なことをして国民を裏切っているか、今や明白である

 しかし、「新しい公民教科書」は生きているし、「新しい歴史教科書」も死なない。必ず息を吹き返し、教科書改善の旗を守り抜く用意ができている。心ある方々の、物心両面のご支援を切にお願いする次第である。(問い合わせは、つくる会 03-6912-0047まで)