pet「マリの喫茶室」

【マリの喫茶室】 47  [マリの命を救った酸素ハウス] 

ウサギのマリは、現在9歳、あと1か月で10歳になる。

ウサギの寿命は6,7年と言われているので、ご長寿ウサギである。

しかし、見た目は愛らしいままである。

 

(1)マリの身体に異変

 

ある朝マリが、部屋の隅っこで横たわっていた。

横たわっているのは珍しくないのだが、身体が小刻みに震えている。

これはおかしいと思い、耳を触ると冷たい。ウサギの体温は、37度以上と高いので、これはかなり低体温である。

しばらく見ていたが、マリは立ち上がろうとしても、よたよたと座り込んでしまう。その日は、私も色々予定もあったので、もう少し様子をみようか、病院にすぐ連れていくべきか迷った。

本人が具合が悪いと言ってくれれば分かりやすいのだが、表情だけを見ると普通である。特に具合の悪い顔というのはしない。

ただ、低体温と時々身体が小刻みに震えているのは明らかに異常である。体重1キロと身体が小さいマリは、時間がたてば重症化し、手遅れになってしまうかもしれない。

少し迷ったが、万が一を考え、その日の予定をキャンセルし、かかりつけ医のところに行くことにした。マリの命には代えられない。マリは、家族というか、もう娘のようなものだ。

 

(2)マリ不治の病に

 

かかりつけ医といっても、電車で片道1時間以上かかるので結構大変である。

あらかじめ電話をしておいたので、マリは待たずに診察をしてもらえた。

 お尻から熱を測ると、35度しかない。かなりの低体温ということで、レントゲンを撮った。

胸のあたりに影があるというので、より詳しく検査するため、超音波検査をした。ウサギの超音波を見るのは初めてである。まるで人間のようだ。

 獣医師によると、心臓の上に液体のような固まりがあるという。2センチ大とかなり大きい。液体なので癌ではない。胸水でもない。心臓に接近しているため、液体を抜くような手術はできないという。

 薬や点滴も効かない。治療法はない。今日明日の命かもしれない、と言われた。

 

(3) 酸素ハウスで暮らす

 

 しかし、医師からそう宣告されている間に、マリはどんどん元気になってきた。理由は、酸素吸入である。病院に到着してから、20分くらいマリはずっと酸素を吸い続けていた。

 再び体温を測ると、正常値に戻っており、周りをキョロキョロする余裕もでてきた。

 手術も薬もないが、酸素がいいらしい。ということで、医師から酸素ハウスのレンタルのパンフレットをもらい、マリはまた1時間以上かけて家に帰った。

 

 その日は、そのまま体調を維持した。早速酸素ハウスをレンタルすることとし、翌日、酸素ハウスが届いた。毎月レンタル料が17000円とそれなりのお値段がするが、それでマリが元気になるなら安いものである。

部屋の空気から高濃度の酸素を作る酸素濃縮器からチューブを通して、透明な樹脂のハウスの中に酸素を入れる方式である。

 空気中の酸素は通常は21%くらいだが、酸素ハウスに入ると、だいたい30%くらいになる。

 はじめ、マリは透明のケースが落ち着かないのか、入るのを嫌がった。しかし、周囲を新聞紙で覆って暗くし、ケースの中に、ティモシーや野菜を入れて、無理やり中にいれてロックした。最初は開けろ、開けろとケースをひっかきまわして騒いでいたが、やがてあきらめて中で横たわったり、草を食べだした。

 

 こうして、マリの酸素ハウス暮らしが始まった。酸素を吸うと、循環がよくなるのか、マリは以前よりも、元気になった。

 腫瘍があることは変わりがないのだが、前よりもよく食べ、1日のうち3時間から4時間くらいは、酸素ハウスで過ごすようになった。

 マリの「新しい日常」が定着した。

 

 高齢や呼吸器に持病のあるペットの場合、ずっと酸素ハウスの中で暮らし続けることもあるという。

 

 明日をも知れない命と宣告されたマリだが、その日からはや1か月、今日も酸素ハウスに自分から入り、昼寝をしたり、草を食べたりしてのんびり過ごしている。

 酸素ハウスで長生きしてね。マリ。目指せ兎年!

 

(酸素ハウス)