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【憂国の直言】  「徴用工問題」日本は一ミリも譲ってはならない    松木國俊(朝鮮近現代史研究所 所長)

経済復興資金は「日本から脅し取れ」

 

コロナ騒ぎが収束すれば、文在寅政権は日本に牙をむくだろう。世界中の国々は疫病との戦いで疲弊し、自国の経済再建で精一杯である。世界貿易のV字回復はまず望めない。ならば輸出がGDP比40%近くを占める韓国が自力で立ち直ることは到底不可能だ。

そこで文大統領は「伝家の宝刀」を抜く。歴史問題を持ち出して日本を恐喝し、巨額の経済復興資金を勝ち取るのだ。

これまで過去の歴史を口実に「経済協力」を要求すれば、日本は平身低頭し、這いつくばっていくらでもお金を差し出してきた。戦後初めて韓国に盾を突き、日本の正論を通してきた手強い安倍政権も、左翼野党が仕掛けるしつこい「重箱の隅」戦術の前に国民の支持を失いつつある。ここで日本側に次のように持ち掛ければよい。

「元徴用工側に差し押さえられている日本企業の資産が現金化されれば両国関係は破綻する。しかし、日本が歴史を直視して行動すれば解決は可能だ。未来志向の友好関係を築くために、日本に是非協力してもらいたい」

すると自己顕示欲ばかりが強く、国家観など微塵もない愚かな芸能人たちがこれに乗って、「安倍政権は韓国と仲良くせよ」と、良識派を気取りながらツイッターで発信するだろう。善良な大衆は「好きな芸能人のいう事だから」と無条件で支持することになる。

今や日本の左翼政党と芸能人は韓国の強い味方だ。日韓議員連盟の河村幹事長も韓国を代弁してくれる。この機に徴用工問題という日本から厖大な金をむしり取れるカードを切らない手はない。日本の左翼マスコミも応援するだろう。日本の世論は容易に「韓国に協力すべし」の方向に変化し、日本政府はたちまち折れて金を出すはずだ。文政権はそのように踏んでいるに違いない。

 

「不法統治」ならば天文学的補償金が取れる

 

 2018年10月末、韓国の最高裁判所は、第二次大戦中に朝鮮人を強制労働させたとして、新日鉄住金(現日本製鉄)に対して、原告4人へそれぞれ1000万円の賠償金支払いを命じ、続いて同年11月には三菱重工業に対しても同様の判決を下した。

最高裁の判決理由は「日本による朝鮮半島統治は不法な植民地支配であり、不法に強制動員された被害者には個人的に慰謝料の請求権が残されている」というものだ。元徴用工及びその遺族だけでも20万人いる。一人1000万円なら訴訟総額は最終的に2兆円となる。しかも最高裁は「日本で働いた」イコール「不法に強制動員された」との認識に立っており、新日鉄住金に勝訴した原告も「徴用」ではなく自分の意思で日本に渡ってきている。そこまで含めると請求権を持つ人の数は「徴用」の数倍に膨らむはずだ。

そればかりか日本統治が「不法な植民地支配だった」という判決が正当なものとして定着すれば、日本統治時代の日本人によるあらゆる行為が訴訟の対象となるだろう。大戦末期に行われた徴兵も不法行為であり、朝鮮総督府が朝鮮人から徴収した税金も不当な収奪となる。「創氏改名」で名前を奪われ、民族のプライドを傷つけられた(実際には朝鮮人の要望で日本名を名乗る道を開いたのみ)、朝鮮語を奪い日本語を強要した(実態は共通語として日本語を普及させただけ)等々、補償金や慰謝料をいくらでも請求できる。その額は天文学的数字となり、日本は永久に韓国の「金づる」になるのだ。

 

「徴用」の実態

 

しかし、この最高裁の判決理由は歴史的事実を大きく歪曲している。「日韓併合」はその名の通り「国家併合」であり、日本が宗主国として朝鮮半島を植民地支配したものではない。「日韓併合」によって朝鮮の人々は日本国民となり、彼らに日本人と同じ権利と義務が生じたのが歴史的事実である。

日本人に対する徴用は1939年に発動されたが、大戦末期にはあらゆる産業で人手不足となり、1944年9月にはそれまで猶予されていた朝鮮半島の人々にも「徴用」が発令され、その後約半年間のみ実施された。当時日本国民である朝鮮の人々を徴用することは国内法及び国際法に照らしても全く合法である。

韓国では朝鮮人徴用工が虐待されたと主張し、長崎県『軍艦島』の炭鉱をその典型的例としてあげている。しかし軍艦島の元島民たちは「朝鮮人徴用工に対する差別はなく、日本人も朝鮮人も一心同体で働いていた」と証言している。

韓国でベストセラーとなった『反日種族主義』の著者の一人である李宇衍博士が九州大学などに保管されている膨大な資料を基に作成したレポートによれば、朝鮮人徴用工に対する民族差別は全くなく、賃金も日本人と同一に払われており、行動の自由もあった。さらに炭鉱の坑内では危険な仕事は熟練した日本人が担当し、通常2年契約で経験の少ない朝鮮人には、運搬などのより安全な作業を担当させたことなどを明らかにしている。本来、徴用工問題で日本に責められるべきことは何もないのが真実なのだ。

 

日本は一ミリも譲ってはならない

 

日韓間の請求権問題は1965年に締結された「日韓請求権・経済協力協定」によって個人の請求権も含めて「完全かつ最終的」に解決したことを両国政府が確認している。この協定によって日本側は戦後朝鮮半島に残した日本人民間資産(現在の価値に直して16兆円)を放棄し、さらに無償援助3億ドル、有償援助2億ドル、民間借款3億ドルの合計8億ドルを韓国側へ供与することが取り決められ、実行された。1965年度の韓国の国家予算は3億5000万ドルであり、8億ドルはその約2年半分に相当する。この交渉の過程で日本政府は、戦前・戦中に日本の公官庁や企業などで働いていた朝鮮の人々に対して、給料の未払い分や年金の支払いなど、個人的に補償を行うことを韓国政府に申し入れていたことが当時の外交文書からも明らかである。しかしながら韓国政府は「個人への補償は韓国政府の責任において行う。日本からの援助金は全て韓国政府が一括して受け取る」と主張して譲らず、最終的に日本政府も韓国政府の意向を受け容れて個人への補償分も含めて韓国政府に一括して援助金を支払った。歴代の韓国政権もその事実を認め、実際に元徴用工に対する補償も行っている。

このように徴用工問題は外交的にも韓国の国内でも完全に解決した問題なのだ。しかし、日本が韓国の要求を受け入れて新たな交渉に応じれば、それが政府であろうと民間企業であろうと、その瞬間に「補償問題は解決済み」という日本の立場は崩壊する。それは「不法な植民地支配」だったことを認めることに繋がる。文政権はそれを狙っているのだ。

日本政府は「国家間の約束を守れ」と韓国に迫り、同時に韓国の不条理を世界に発信して日本の立場を世界に認めさる必要がある。企業も目先の利益の為に個別交渉に走っては絶対にならない。一社でも交渉に応じたらそれで終わりだ。韓国の狡猾な魔手から日本を守り、誇りある美しい国を子々孫々に残すために、我々日本人は「徴用工問題」で韓国に一ミリも譲ってはならない。

                                     以上