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【資料】 「新しい歴史教科書」一発検定不合格に関する、文科大臣への公開質問状です。 令和2年5月25日 文部科学大臣 萩生田光一殿 文科省「不正検定」を正す会 代表 加瀬英明 新しい歴史教科書をつくる会 会長 高池勝彦

 

令和元年度・中学校歴史教科書の「不正検定」に関する公開質問状について

 

謹啓 

新型コロナウィルスの禍中にあって、公務ご多忙のことと拝察いたします。

 3月24日の中学校教科書検定結果の公表以来、上記の事情をお察し申し上げ、今まで敢えて発信を控えておりましたが、ようやく緊急事態宣言も解除の方向が見えてまいりました。

教科書検定の問題は日本の子供の教育と、それを通して日本の将来に関わる極めて重要な問題ですので、この度、別紙「公開質問状」を提出し、文部科学行政の最高責任者であられる貴職の見解をおたずねすることといたしました。

  私どもは、令和元年度中学校教科書検定で、株式会社自由社の『新しい歴史教科書』が、平成28年に新設された「一発不合格」制度によって抹殺されたことは、文科省による「不正検定」の結果であり、断じて容認することの出来ないものであると考えております。

 その理由については、すでに2月21日の「つくる会」声明以来、様々な形で表明してまいりました。検定審議会の前日、3月23日には、「つくる会」の高池会長が直接貴職の議員会館事務所を訪れ、要望書と資料を手交してまいりました。

「一発不合格」制度の最大の問題は、教科書調査官個人の思想・信条や思い込みによって検定意見が作成され、それが行政命令としての効力をもつことによって、一民間企業に対する生殺与奪の権限が付与される、という事実にあります。

今回の極めて不当な検定不合格処分によって、株式会社自由社は中学校歴史教科書の採択市場から4年間、事実上排除されることになり、その損害は計り知れません。

 以上のような問題の所在と、ことの重大性をよくご認識の上、下記の質問に対し、文科行政の最高責任者としての真摯で明快なご見解を賜りたく、お願いする次第であります。

なお、既にご承知かもしれませんが、4月28日付けの産経新聞に掲載された文科省「不正検定」を正す会の意見広告には、私どもの呼びかけに応じて全国から1392名の皆様のご参加をいただきました。さらに、広告掲載後も紙面を見た方から続々と賛同のご意見やご寄付をいただいております。

この公開質問状の回答にも、多くの国民の注目が集まっております。教育行政について篤い志を持って就任された萩生田文科大臣におかれましては、どうぞ誠実なご回答をして下さいますよう、重ねてお願い申し上げ上げます。

大臣のますますのご活躍をご期待申し上げております。

            謹白

 

令和元年度・中学校歴史教科書の「不正検定」に関する公開質問状

 

文部科学大臣 萩生田 光一殿

 

令和2年5月25日

 

文科省「不正検定」を正す会

新しい歴史教科書をつくる会

 

(1)検定終了後の部内調査の有無と大臣の見解

 

<質問1>

3月10日の参議院文教科学委員会において、松沢成文議員が大臣に質問を行いました。その中で大臣は当時検定中であったために「検定が終わるまで内容についてはコメントできません」と発言されました。また、数回のやりとりの後、「不正があれば私の責任で対応する」旨、言明されました。

   中学校教科書の全ての検定は3月24日に終了していますが、その後、本件について何らかのコメントを出しましたか。もし公式にコメントや見解を出しておられましたら、その内容をお知らせ下さい。

 

<質問2>

   上記の「不正があれば私の責任で対応する」とのご発言について伺います。「不正があれば」と述べているということは、当然ながら、その後、不正があったかどうかについて文科省内部で関係者からの聞き取りを含む調査をされたものと推測されますが、それは実際に行われましたか。

 

<質問3>

   質問2に「はい」と回答された場合、その調査結果はどのようなものでしたか。具体的にお示し下さい。

 

<質問4>

   質問2に「いいえ」と回答された場合、調査をなさらなかった理由をお聞かせください。また、今後調査の予定があるかどうか、あるとすればその結果をいつ公表するのかお聞かせください。

 

(2)告発者側からの聞き取り調査の必要性に関する大臣の見解

 

<質問5>

   不正行為があったかなかったかの調査は、当然ながら不正があったとする私ども告発者側の意見も聞かなければ完結しません。私どもは、内々に聞き取り調査の機会を頂きたいとの意思を表明して参りましたが、この質問状を起案する時点ではまだ一度も実現しておりません。大臣におかれましては、私どもから事情聴取をする必要性をお認めになりますか。

 

<質問6>

   もし私どもの側からの事情聴取の必要性をお認めにならないとすれば、それはいかなる理由によるのですか。

 

(3)不正が発覚した場合の措置と処分についての大臣の見解

 

<質問7>

仮に調査の結果、不正が発覚した場合、自由社教科書の検定について、今後どのような処置をとるつもりなのか、お聞かせください。

 

<質問8>

   同じく、不正が発覚した場合、当然ながら不正を働いた人物は懲戒免職処分が相当となります。関係者の処分についての見解をお聞かせ下さい。また、大臣ご自身はどのような形で責任を取られるおつもりですか、併せてお聞かせ下さい。

 

<質問9>

さらに、不正が発覚した場合、このような不正が起きてしまう現行の教科書検定制度自体に重大な問題があると思われます。教科書検定制度の改革についてご見解をお聞かせ下さい。

 

(4)公表されている論点についての大臣の見解

 

<質問10>

   自由社の歴史教科書の執筆者グループは、指摘された欠陥箇所のうち、7件について「不正検定」の事例をあげたリーフレットを作成しました。また、「不正検定」を正す意見広告では、5件について例示しています。そこで、サンプルとしてこれらの中から次の8つの事例について、大臣のご見解を具体的に伺います。いずれの回答にも理由を附して下さい。以下で、( )内の数字は、欠陥箇所番号を示しています。

 

①仁徳天皇が「世界一の古墳に祀られている」は欠陥箇所ですか。(28)

②聖徳太子が「古代律令国家建設の方向を示した」は欠陥箇所ですか。(100)

③毛利輝元が「関ヶ原の戦いでは西軍の大将格として徳川家康に敗北しました」は欠陥箇所ですか。(194)

④坂本龍馬が「土佐藩を通じて徳川慶喜に大政奉還をはたらきかけたともいわれています」は欠陥箇所ですか。(252)

⑤「ソ連中心の共産主義陣営」の動向を書いた年表の中で、「中華人民共和国(共産

党政権)成立」としたのは欠陥箇所ですか。(369)

   ⑥新年号「令和」が公表される直前に印刷された検定申請本に伏せ字を使ったところ

    は欠陥箇所ですか。(16)

     ⑦魏志倭人伝についての前回と全く同じ記述が今回は欠陥箇所とされたのは、不正で

はありませんか。(66)

   ⑧平城京跡の朱雀門について、東京書籍について指摘していない箇所を自由社につい

て欠陥箇所(110)としたのは不当な差別的扱いではありませんか。(4.28産経

新聞掲載意見広告の④)

 

(5)「従軍慰安婦」記述の復活についての大臣の見解

 

<質問11>

今回の検定では、他社の教科書で「従軍慰安婦」記述が復活しました。これは、大臣ご自身が取り組んでこられた教科書正常化に逆行するものであり、許しがたい事態と考えますが、大臣の見解をお聞かせ下さい。

 

(6)文科官僚が流しているデマについての大臣の見解

 

<質問12>

   検定不合格とされた後、「新しい歴史教科書をつくる会」は、行政のこの暴挙について多くの国会議員の先生方に事情を説明にまいりました。そのなかで、文科官僚は今回の不正行為を隠蔽するために、系統的に虚偽の情報を流し、国会議員の先生方に吹き込んでいる事実が多数判明いたしました。その内の代表的なものは、次の2つです。

 

①「自由社は文科省の指摘に対して、その修正を頑なに拒否した。だから不合格になった」

②「前回の検定で修正に応じた約40項目について、再び修正前のものを出してきた。だから不合格にした」

 

 ①については、もう何回も発信しておりますが、「一発不合格」制度のもとでは、一切修正の機会は与えられていないのであり、拒否するか受け入れるかなどの議論の余地もないものです。だからこそ、「一発不合格」という呼称でよばれるようになったのです。ですから、これは当方の「頑なさ」を強調して、あたかも不合格は当方のふるまいの責任であるかのように事態を描き出すデマであることは明白です。

②については、修正前のものを出そうが出すまいが、それは合否に直接関係するわけではないことを誤魔化しています。逆に、この発言は、ありていに言えば「態度が悪いから不合格にしてやった」という意味になり、当方の主張する無理な指摘を水増しして不合格ラインに到達させたという「不正検定」が、懲罰としておこなわれたということを自白しているようなものです。

そこで、大臣に伺います。大臣ご自身は、上記①②のデマ情報を把握されていますか。また、それについて、どのように判断し、対処されましたか。

 

<質問13>

   さらに具体的には、この間、文科省の責任ある立場にある人物が極めて重大な発言をしていることがわかっているので、それを取り上げます。文科省の丸山洋司初等中等教育局長は、次のような趣旨のことを関係者に語っています。

<11月5日の検定結果申し渡しの日に、「問題の40箇所を直せば年度内に再修正させてやる」と執筆者側に持ちかけたが、執筆者側は頑なにこれを拒否したから不合格になった>

前項の<質問11>で述べた通り、「一発不合格」になった教科書について、「40箇所を直す」などの修正の権利は一切剥奪されているのであり、文科省といえども制度上そのようなことは出来るはずがありません。事実としても、当然ながら、文科省側からはそのような話は一切ありませんでした。これは「一発不合格」という理不尽で残酷な制度の本質をまだ理解できない人に対してのみ効果のある、俗耳に入りやすいことを計算しつくした上での完全なデマです。このようなデマを流した丸山局長の行動の誤りは極めて深刻・重大であり、直ちに責任問題が発生します。

大臣はこのデマをお聞きになられましたか。また、このデマについての大臣の見解をお聞かせ下さい。

 

(7)教科書調査官との公開討論に関する大臣の見解

 

 <質問14>

   自由社の歴史教科書を検定で「一発不合格」にした行政行為において中心的役割を

果たした4人の教科書調査官(中前吾郎、村瀬信一、橋本資久、鈴木楠緒子の各氏)

は、「不正検定」の疑いがかけられている以上、国民に対し説明する責任があります。そこで、7月4日、公開討論会を設定し、本日、その出席について個別に申し入れをいたしました。文科大臣からも教科書調査官として国民への説明責任を果たすための出席を慫慂していただきたく、お願い申し上げます。この件につき、ご回答下さい。

 

(8)検定制度改革の3項目案についての大臣の見解

 

<質問15>

   今回のような事態が二度と起こらないようにするため、以下の3項目の改革案を提

案したいと存じます。

 

  ①「一発不合格」制度を廃止する。

  ②「生徒が誤解するおそれのある表現である」などの条項を含む検定基準3-(3)

を廃止する。

  ③「近隣諸国条項」を廃止する。

 

  これについての大臣の見解をお聞かせ下さい。

 

   以上、計15項目について質問させていただきました。回答期限は本日より約半月後の6月11日とさせていただきます。

また、この公開質問状ならびにそれに対するご回答については、<文科省「不正検定」を正す会>のホームページをはじめ、各媒体にて広く公開・拡散させていただきますので、お含みおき下さい。

 

 <追伸> 参考資料として、①『教科書抹殺-文科省はこうして「つくる会」を狙い撃ちした』(飛鳥新社)の2刷版(誤植などを訂正したもの)、②執筆者グループの作成したカラー・リーフレット、③4月28日付産経新聞掲載の全紙大意見広告のコピー、を進呈いたします。