minsha 「とおる雑言」

【とおる雑言】 「非常事態」を論じよ     寺井 融 アジア母子福祉協会監事

新型コロナ危機にあたって、各国の対応に差があって興味深い。発生源の中国は当初、隠蔽に走り、その後、感染地の完全封鎖で鎮静化をはかる。彼の国の発表には信憑性に疑念があるものの、いちおう峠は越え(?)、いまは焦点が伊西仏の南欧、それに英米に移った。

「なぜ、日本は、都市封鎖や医療品の生産命令を出さないのですか」と後輩に訊かれ、「それは簡単ではないよ。能力はあるが、法体系が整っていないから」と答えた。

 日本国憲法では、言論・結社・集会や居住・移転などの自由、並びに財産権ほかの私権は保障されている。しかし、戦争、大災害、疫病の大流行などの非常時、緊急事態に際して、それらの一部制限、公益、国益重視の方針は憲法に明記されていない。他国では明記されている。憲法公布(一九四六年十一月)当時は、占領下であり、それら事態には、占領軍があたると考えられていたのかな?

 現在、外出禁止や営業停止を呼びかけてはいるが、あくまでも要請であり、お願いである。罰則もないし、強制力もない。自動車工場に人口呼吸器の生産を命じることなどは、もちろんできないのである。

 もっぱら「要請」や「忖度」、そして「空気」で乗り切ってきた。法治国家として、これでよいのか。二〇〇六年の創憲会議(旧民社党系)の「憲法草案」では、第三条で「軍隊の保持」を謳い、第八十七条では「緊急事態への対応」が示されている。他の「憲法草案」も含めて、国会で大いに論じたらよい。