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【ストップ・ザ・左翼政局】  ―野党合流は蒸発、選挙が遠のき遠心力が。 「議員でありたい症候群」の無節操 ‼-   鳥居徹夫(元文部科学大臣秘書官)

🔶伸びない野党の支持率、不信任案も封印 

 

第201回通常国会の初日となった1月20日、立憲民主党と国民民主党は昨年来協議を続けていた両党の合流を見送った。そして今後両党は国会での共闘や選挙協力を深めることとなった。

衆議院議員の任期が折り返し点を過ぎた昨年2019年の秋から暮にかけて、民進党から枝分かれした立憲民主党と国民民主党、そして野田佳彦らの院内会派社会保障を立て直す国民会議」の合流に向けての動きが活発になり、社民党も含めて年末にも、遅くとも今年1月20日からの通常国会には合流するとの見方も強かった。

すでに昨秋の臨時国会から、国会内で統一会派が結成されており、旧民進系の統一会派は安倍内閣の菅原経済産業大臣や河井法務大臣を辞任に追い込み、さらには桜を見る会も取り上げた。

野党は、桜を見る会の招待枠や、名簿の文書管理などについて、モリカケ並みの追及材料として安倍首相や菅官房長官を追及。予算委員会や内閣委員会はもとより、所管でない委員会でも政府与党を攻撃した。

ところが野党の支持率は伸びず、むしろ低下傾向が継続していた。

本来ならば、野党は攻勢をかけるチャンスのはずだが、昨年末の臨時国会では内閣不信任案を提出しなかった。

立憲民主党などに、選挙準備ができていなかったのである。

 

 

🔶どの党の候補者が、比例復活枠に入るのか 

早ければ年明けとも言われた総選挙に向けて、旧民進系の諸政党は、候補者の調整と一本化、新たな候補者擁立、そして現職議員の生き残り策もあって民進系諸政党の合流に向けた協議が進められたが物別れになった。

解散の機運が強かった昨年秋には、国民民主党の津村啓介副代表、奥野総一郎国対委員長代行ら比例復活の中堅・若手が、立民などとの早期合流に向けた交渉入りを玉木代表に要求した。また年明けにも合流を両院議員懇談会で主張した議員も多くみられた。

 国民民主党の衆院議員に合流推進派が多いのは、合流すれば次期衆院選を有利に戦えるからである。というのは小選挙区で落選しても比例復活で議席がとれる可能性が強いからである。それは立憲民主党の現職議員よりも惜敗率が高いからである。

たとえば2017年の総選挙では、立憲民主党所属の当選議員の惜敗率が低かったし、単独比例で当選した議員も多かった。

つまりベテラン議員や一部を除いて、選挙地盤すら存在しなかった立憲民主党所属の候補者まで、低い惜敗率で当選したのであった。

立憲民主党の候補者は、風だのみのイメージ選挙であったのに対し、国民民主党の候補者は一定の選挙基盤がありながらも、風が吹かなかったため比例当選者数が少なかった。

支持率が1%程度と低迷する国民民主党の看板で衆院選は戦えないが、支持率が5%程度の立憲民主党の看板ならば、比例復活の上位で当選、あわよくば小選挙区での議席獲得も、というのが本音かもしれない。

実際、比例で惜敗率の高い候補者(当選議員、落選者)が、国民民主党に多くいた。

一方、立憲民主党の選挙に弱い議員、とりわけ比例復活や単独比例で当選した議員にとって、比例復活枠を国民民主党系の議員や候補者が多く占めることとなると、立憲民主党系の候補者に比例当選枠が回ってこないのである。

 

🔶対等合併か吸収合併で決裂 

今年に入り1月5日、立憲民主党の枝野代表は記者会見で、野党合流について「新党を作る呼びかけをしたことは一切ないし、新党を作るつもりは100%ない」と述べ、立憲民主党に国民民主党が加わる「吸収合併方式」を前提とする考えを改めて強調した。

つまり合流後の存続政党は「立憲民主党」というスタンスである。

一方の、国民民主党は「吸収合併はあり得ない。新党を作っていく」(1月4日の玉木代表記者会見)という姿勢で、全く相いれない状況となった。

とくに国民民主党の参議院議員には、立憲民主党への不信が強い。

昨年夏の参議院選挙で、国民民主党の現職がいる静岡選挙区で、立憲民主党が知名度のある新人を擁立したが、国民民主党が議席を死守した。この感情的しこりも尾を引き、立憲民主党との合流に参議院は反発が強い。

ところが国民民主党の衆議院議員は、いつ解散総選挙となるかもわからないことから、参議院議員とは温度差がある。

両党は、昨年秋から合流に向けた協議を重ね、衆議院では国会議事堂の両党の控室の壁をぶち抜いたものの、進展が見られなかった。そして通常国会が始まる今年の通常国会が始まる1月20日には、合流そのものが頓挫した。

それは総選挙が遠のいたからである。

安倍総理は、政局の打開のため野党の選挙態勢が整う前の早期解散を視野に入れていたと言われたが、臨時国会の終了後に元副大臣の現職国会議員が逮捕され、中国企業が複数の国会議員らに金銭をばらまき働きかけるなどのカジノ疑惑が広がったこともあって、解散総選挙の勢いは急速にしぼんだ。

したがって、議員生活の生き残りを賭けた総選挙対策は、必要性が遠のいた。

つまり解散風が吹けば合流の求心力が働き、解散風が萎めば遠心力が強まるのである。

 

🔶議員でありたい症候群、国会議員の劣化が止まらない 

そもそも立憲民主党と国民民主党とは、政府攻撃では文書管理などで共同歩調をとるが、原発問題ひとつとっても基本政策の一致はない。

国民民主党の衆議院議員は、前回の衆議院議員選挙(2017年10月)では、小池百合子らの「希望の党」から立候補し当選した議員である。

そして、希望の党の選挙公約である①憲法改正、②平和安保法制の適切に運用、③外国人への地方参政権付与反対、などの政策文書に署名し公認され選挙に臨んだ。そこには比例復活した議員も多かった。

にもかかわらず希望の党や、のちに結党した国民民主党からも離党し、立憲民主党の会派に加わった無節操な議員も多かった。

立憲民主党の比例復活議員も含め、所詮は「議員でいること、議員になりたいことが目的」のようである。

これは自民党の「魔の三回生議員」にも共通する。政権交代となった2012年の総選挙では、政権党の民主党は候補者公募を行わなかった。というのはどの選挙区も現職議員や候補者が埋まっていたからである。

一方、野党自民党は候補者難であった。野党自民党の候補者公募に応じ当選したのが、魔の三回生議員なのである。

なかには複数の政党で、候補者公募に応じた強者もいた。

自民党と民主党の公募に応じ、めでたく2009年に民主党議員となった後藤英友は連座制を問われる裁判を前にして議員辞職した。

つまり「議員になることが目的」という病理現象が、与野党を問わず蔓延していると言っても過言ではないのではないか。

解散総選挙がないならば、議員ほど社会的ステイタスがあって、しかも優雅な職業はないというのであろうか。

野党議員は、反アベという攻撃材料が続かなければ失速する「自転者操業」である。彼らに明日という日はない。(敬称略)