contribution寄稿・コラム

隣の家に強盗に入ると公言する無頼漢を我が家に招くな 西村眞悟

一月十一日に行われた台湾総統選挙で、民進党の蔡英文総統が過去最高の得票で中国国民党候補に圧勝した。この勝利に対して我が国の政府高官から台湾に祝意が示された。この祝意に対して中共の外相が、「一つの中国の原則に反している。強い不満と断固として反対を表明する。」と抗議した。そこで、まず言っておく。「この蔡英文圧勝が、日本を含む東アジア動乱の引き金になることを覚悟して、台湾に祝意を示したんだろうな!」と。「祝意を表して、後のことは知りません、ではないんだろうな」と。この蔡英文勝利で、台湾への武力侵攻による「統一」が、中共の残された具体的選択枝となったからだ。昨年の春、中共の習近平主席は、台湾統一の手段に武力行使も含むと公言しているではないか。

従って、今、我が国が独自で為すべき事は、尖閣諸島と周辺海域の防衛体制の強化である。何故なら、尖閣は、中共の台湾侵攻の為の橋頭堡であるからだ。中共が、従来通り、金門・馬祖島を飲み込み西から台湾海峡を制圧すると同時に、北東の尖閣にミサイル基地と港湾と潜水艦基地を設置して東西両方から台湾を挟撃すれば、台湾は中共の掌中に入る。そして、忘れる勿れ、もう一つ、その掌中に入るものがある。それは、沖縄だ。即ち、尖閣は、中共の台湾攻略と沖縄攻略の橋頭堡という隠れた戦略的要衝なのだ。大東亜戦争末期の絶望的状況を想起されよ。台湾と沖縄が落ちれば、日本国自体が陥落する。

それ故、昨年から香港で七ヶ月間続いてきて、一月十一日に台湾の蔡英文総統再選をもたらした、自由と民主主義の大義の下に中国共産党独裁政権を拒絶する我が国直近の東アジアの動きを、我が国が漫然と眺めていてはならない。中国共産党独裁政権の人権無視の基礎にあるイデオロギーがもつ民主主義陣営への強烈な敵対性を過小評価してはならない。その中共が、香港と台湾の民主化への動きによって八方塞がりになった状況を打開するために、隠れた橋頭堡である尖閣に突如侵攻する事態、つまり、「日本侵攻」は大いにありうる。我が航空自衛隊機の中共軍機に対するスクランブル発進回数は平成二十八年度に過去最高の八百五十一回に達し、尖閣諸島周辺海域に対する中共公船の侵入は六十日以上に達しているではないか。

よって、「断ずるに当たって、断ぜざるは、却ってその乱を受く」という言葉がある通り、今、我が国が、尖閣防衛強化のための現実的な行動を起こさなければ、近い将来、我が国が、東アジアに大きな動乱を産み出すことになる。従って、我が国は、従来の尖閣に対する警察活動的警備行動の次元を越えて、自衛隊による国防体制の構築を実行しなければならない。私は、尖閣諸島の魚釣島に、平成九年、上陸して現認しているが、同島にはヘリポートがあり、トーチカになり得る石を組み合わせた建造物もある。それを「敵」に使わせるのではなく、我が自衛隊によって確保し整備することが東アジアの自由と民主主義への動きを守るための急務であろう。

その上で我が国は、つまり安倍総理は、「独裁者への宥和が戦争を作った」という歴史の教訓、つまり、ミュンヘンにおけるイギリス首相チェンバレンが、チェコのズデーデン地方にドイツ人が多く住んでいるという理由で、その割譲を要求するドイツ総統ヒトラーに宥和したことが、第二次世界大戦の引き金となった教訓に思いを致さねばならない。

そして、日本の「チェンバレン」にならないという覚悟を安倍総理に求める。即ち、安倍総理は、台湾統合を要求する中共の習近平主席に断じて宥和してはならない。昨年来の香港の民主化運動と、これに連動した台湾の総統選挙に於けるこの度の台湾独立派の圧勝によって、東アジアの状況は急転した。従って、この状況に習近平主席が敵対的行動を示すならば、直ちに彼自身が我が国の国賓となる環境を潰したと判断し、彼の国賓招聘を取り消さねばならない。この習近平主席を、我が国の国賓として処遇することは、安倍総理が危険な独裁者に宥和し、東アジアの動乱をつくる「チェンバレン」になるということだ。

総理よ、隣の家に、強盗に入ると公言する無頼漢を、我が家に招待するな。