shohyo「書評」

ドストエフスキーは「ネトウヨ」だった? 「ドストエフスキーの戦争論」〈萬書房〉を執筆して 三浦小太郎(評論家)

 

「ロシアの対トルコ戦争は聖戦である」「対トルコ義勇兵たちはキリストの信仰のもとに戦場に向かっている」「平和主義は偽善であり、むしろ戦争の中にこそ世界の真実が現れる」「ロシア皇帝と民衆は一体であり、このことがわからないものにはロシアはわからない」「真のキリスト教信仰はすでに西欧では失われ、ロシア民衆の中にしか存在しない」「西欧は信仰も伝統も近代化のなかで消滅し、最後には革命と戦争のなかでその文明は滅びるだろう」「カトリックの秘密組織やユダヤ人たちが危険な陰謀をめぐらせている・・・」

 以上、まるで今のインターネット社会を思わせるような極論や陰謀論が散見される文章が、ロシアの文豪ドストエフスキーが晩年に書き続けた『作家の日記』には散見される。ちくま文庫本で全6冊にもなるこの『作家の日記』には、上記のような政治論や、社会評論、短編小説、文学論、芸術論などが書かれており、ある意味、「罪と罰」「白痴」「悪霊」「カラマーゾフの兄弟」などの長編小説におけるドストエフスキーの思想が、もっと直截的な、時には乱暴な表現で記されている。

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